八夜 ページ8
「隊長……じゃあ、その子はいったい………」
恐る恐る、といった感じで俺は聞いた。誘拐や隠し子でなければ、他に残された可能性はただひとつ_____
「保護だよ、保護。
さっき、あの村の生き残りがなんちゃらって
話聞いただろ？」
「よ……良かった……！」
「え、ああ……誤解が解けたみたいで、なにより
だよ……」
サッチ隊長は、「俺ってば信用されてねえのな……」と困り顔でどこか遠くを見つめている。
でも、良かった。本当に、良かった。というか、よくよく考えてみたらこの人がそんなことをするはずないもんな。あー、安心した。
俺はホッ、と胸を撫で下ろした。
「……ごちそうさま」
「おう、旨かっただろ？」
「うん」
どうやら、この子も料理を食べ終わったようだ
った。なぜだろうか…………この光景が懐かしいよう
な、そんな気がする。
「じゃ、俺はこの食器片しとくから。
おい、マルコ！ティーチ！この子の喋り相手
頼んだぜ！」
「おう………はあ！？」
「ゼハハハハ！！そりゃねえぜサッチ隊長ォ！」
お前は俺と片付けな！とサッチ隊長は俺を指差して言った。………にしても、任せ方が雑すぎではないだろうか。
_____二人とも今まで女性と話したことはあっても、子供……それも女の子とはあまり関わることがなかったらしい。
今は厨房の中から食堂をみているが、あんなにわたわたしているのは見たことがない。
「あー……こういうときって、どんなこと話せば
いいのかよい……」
「この間の敵襲のこととかいいんじゃねえか？
なかなかに面白かっただろォ、俺たちに投げよ
うとした爆弾を足下に落としちまって……」
「バカ、子供に話すには血生臭すぎるよい！」
「そうか？ゼハハハハ！！」
………あの二人に任せといて大丈夫だろうか。
いや、まずい。確実にまずいことになる。実際
あの子は今の状況の理解すらできていない気が……
見かねて、俺は厨房から出ようとした。あの二人にはこういうことは向いていないようだ。
「……お名前、教えてほしい」
ピタリ、と俺の動きが止まる。サッチ隊長はそのまま作業を続けているが、マルコ隊長とティーチさんも一瞬だけ動きが止まった。
あの子から話を振られた。
「………マルコだ」
「俺ァ、ティーチだぜ！そういえば、自己紹介を
するのを忘れてたなァ。
こんなお嬢ちゃんに先手を取られるたァ、俺ら
もまだまだだな。マルコ隊長ォ」
「……ふふ」
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作者名：シヲリ | 作成日時：2019年6月19日 22時
