ある子猫のお話 (ページ4)

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四夜ページ4

「___おーい、サッチ！生存者は………っと、
　その子だけか？」

「そんなところだ。誰かキッチンの用意をしてく
　れ！」

　案内された場所。港には、今まで見たことのないような大きな船が停泊していた。
　それはまるで鯨のような見た目で、私の好奇心を揺らすのには十分すぎるものだった。

「大きい………これ、何人くらい乗ってるの？」

「ん？まあ、ざっと千六百人だな。」

「せ、せんろっぴゃく………」

　私が驚いた顔をすると、そいつ……サッチは嬉しそうな様子で私の手を引っ張り、歩いていった。

「…ねえ、手なんか繋がなくても歩けるから……」

「この船はでかくて広いんだぜ。初めて来たやつ
　はもれなく迷子の称号持ちだ。」

　もちろん俺もな。と、サッチははにかみながら
言った。私、もう人間だったら大人の歳なんだけ
ど………

　そうこうしている内に、ある部屋の前にたどり着いた。扉の横のプレートにはなにやら文字が書いてあったが、私は文字が読めないため、理解することができなかった。

「ここは、俺の部屋だ。本当は六人部屋なんだが
　な、俺だけ余っちまって、今は一人で貸し切り
　状態だ。

　料理ができるまで、ここでくつろいどけよ。」

「わ、分かった。」

　なるほど。じゃあ、この文字は"サッチ"と書かれているのかな。

　サッチはそれだけ言うと、今来た方向とは反対方向に歩いていった。私は、後ろ姿が見えなくなるまでその扉の前で立ち尽くしていた。

「……あいつ、私みたいなやつ放っておくとか、
　大丈夫なのかな……」

　それとも、私が警戒するまでもないくらい弱いのか………？

「まあ、いいか……中入ろう。」

　ドアノブに手をかけ、回した。私はてっきり、
ガチャリという音で開くと思ったのだが、その扉
はカシュッ…という、なんともマヌケな音を響かせ
た。

「壊れてる……あいつはこれでいいのかな…」

　私なら嫌だけど。と、考えながら部屋の中に入った。どうやら、ちゃんと片付いているようだ。机の上には、何冊か料理本が開かれており、"ふせん"というものがたくさんついていた。

　多分、料理のことに関しては勉強熱心なんだろうな。

　机のそばにあった椅子に座り、分かりもしない文字列を眺める。なんて書いてあるかは分からなかったけど、挿し絵や写真によって、どんな料理
ができるのかは、なんとなく分かった。

　ガチャリッ

「おいサッチ。いるか…………

　誰だよい、お前。」

　………こっちのセリフだ。