大嫌い ページ3
どくっ
と心臓が嫌な音をたてる
急激に上がる体感温度
激しく脈打つ音
額にじわりと汗がにじむ感覚
私はそれらを決して表情にも
仕草にも出さないように
全力で気を張り詰めた。
玲於の言葉を聞いて一瞬、
沈黙した沙耶香が
唐突に
「もう！」と明るい声を上げた
「まーた玲於ってばそんなこといって！ほんとはAの隣で嬉しいくせに、照れてるんでしょ、どうせ」
あはは、とおかしそうに笑いながら
沙耶香が言うと、
彼女が作った空気を引き継ぐように
亜嵐も笑い声を上げた
「玲於はガキだからな、女子の隣とか恥ずかしいん だよな」
亜嵐がからかうような口調で言い
玲於の肩を叩く
すると玲於はむっとしたように顔をしかめた
「は？んなわけねえだろ。照れてるとか恥ずかしいとか、あるわけねえじゃん」
沙耶香と亜嵐が作ってくれた空気が
一瞬にして元通りの張り詰めたものになった
それに気づいているのかいないのか
玲於はただ真っ直ぐ私を見る、
窓から差し込む正午過ぎの明るい光を背に受けて
ぎろりとこちらを見る玲於は、
私に威圧感を感じさせた
マスクを引き上げて
これからやって来るであろう
衝撃に備える
「俺は本気で嫌なんだよ」
真顔でそう言いながら
玲於は人差し指を立てて私に向けた
「Aの顔をみるのが」
心の準備をいくらしていても
玲於な言葉は私の心にぐさりと突き刺さった
でも、私はマスクから出た目を細め
笑みをつくる
「あははっ。なにそれ、むかつくー。冗談きつーい」
なんとか思い通りに笑いを声ににじませながら
私は玲於に言葉を返した
どこかぎごちない顔つきでこちらの様子を
窺っていたクラスメート達は
私が笑って言い返したのをみて
ほっとしたように自分達の会話へ
戻っていった。
玲於は眉を寄せて私をみている。
それから小さく舌打ちをして
「うぜえ」
と吐きすてると、とうとつに席をたった
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作者名：773 | 作成日時：2018年9月22日 2時
