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足に力が入らない。
短時間で限界まで筋肉を酷使した結果私は、私を追い掛けて来てくれたうらたさんと坂田さんに支えられながら、屋上の扉を開けた。
開かれた先には、やはり志麻が居た。
どうやらセンラさんに拘束されているようである。
…良かった、センラさんが止めててくれたんだ。
私が予想していた、最低最悪の状況、自害。
それが為されていない事に胸を撫で下ろし、一気に脱力した身体が支えてくれている彼らにより重みをかける。
申し訳無いと思いながらも、緩んだ身体に力を入れることはできなかった。
そんな中志麻を見つめると、彼は顔を真っ青にしてこちらを見ていた。
俯き、声を出す。
「…ほんと、一人に、なりたいから、
皆出てってや」
「やからそれは無理やって。
ほら、Aちゃんとちゃんと話しとき?」
「ちょ、わっ」
センラさんに引っ張られ志麻が私の前に来る。
かち合った目は、少しして彼の方から逸らされた。
「…志麻」
「…なぁに?」
名前を呼ぶと、彼は少し間を置いてから優しく、こちらを向いてふんわりと微笑んだ。
その笑顔にどきりとしてしまう。
幸せそうな笑顔。
…何で、飛び降りようとしてたくせにそんな風に笑うの。
私は志麻を手放さないように、腕の中に閉じ込めようと前に出た。
うらたさんと坂田さんの支えが取れ、私はそのまま前によろける。
それを志麻が受け止めてくれて、お互いに抱き合うような形になった。
彼の腰に回す腕に、強く力を込める。
「ずっと一緒にいようねって、言ったじゃん。うんって、応えてくれたじゃんっ…!」
へろへろになった身体だから、思うように力は入れられていないだろう。それでもできる限り。離さないように。ぎゅうときつく抱き締める。
そんな私に対して、彼は私の背に優しく手を添えているだけだった。
すぐに離れようとしているみたいで、それが悲しく思えてならなくて、私の喉から出る声は震えていた。
「…ごめん。でもな、俺はお前を忘れないって決めたんよ。一生愛し続ける言うたやろ?それを嘘にしたかないねん」
「ずっと一緒にいるって言うのは嘘にしていいの?」
「そんなん、俺がAを忘れてる状態じゃ意味無いやんけ!」
「意味無くないよっ!!」
「無い!!」
「無くない!!」
「A…」
暫く続いた言い合いの後、志麻の目から一粒の涙が頬を伝った。
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ちょこ - とてもよかったです!その後話がもっと欲しい! (2019年10月8日 11時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
とあわ - 控えめに言って最高 (2019年5月18日 23時) (レス) id: b018cf85ec (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - Tileさん» 感動していただけたなら何よりです!こちらこそ、コメントありがとうございます! (2019年5月6日 16時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)
Tile(プロフ) - ガチ泣きしました……すごく面白かったです!!めちゃめちゃ感動でした。感動するお話大好きです!ありがとうごさまいました! (2019年5月6日 12時) (レス) id: 3d55051bee (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 関西風しらすぅ@坂田家さん» そんなに泣いていただけるとは…!こちらこそありがとうございます。目は擦ったら後に響きますので、優しく涙を拭き取って下さいね、コメントありがとうございました! (2019年5月5日 3時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羽飛 | 作成日時:2019年3月9日 12時