44t ページ45
一度私は、単なる興味から陣内さんに異能力を使っているときどう見えているのかを訊いたことがある。
珍しく普通に答えてくれた彼は、どんなに速いものでも静止しているように見えるのだと教えてくれた。
剛速球でも、それこそ銃弾でも。
だから、早く動けるという異能力なんかでこの人に敵う訳がないのだ。
「うわっ!」
吉岡さんは引っ張られたベッドサイドランプのコードに躓き自身の勢いで銃を手放した。
けれども銃を胸ポケットから取り出した陣内さんに目の色を変え、必死にすぐ逃げ出そうとする。
「陣内さん、駄目です!」
やがて逃亡しきれず這いつくばった吉岡さん。
ドーパーに銃を向け、またしても射殺しようとする彼に才木さんは阻止しようと声をあげた。
「お疲れ様でし、」
無視した陣内さんがいつものように撃鉄が起こそうとしたそのとき。
「殺してくれ」
思いがけない言葉に動きを止める陣内さん。
私も吃驚して目を見開いた。
「またパパに怒られる。もう耐えられない」
絶対に一撃で仕留められるようにだろう。
顔を上げた吉岡さんは銃口に頭を近づけ、懇願する。
「頼む、殺してくれ…!」
後ろに居る私には、そんなことを言われた陣内さんの面持ちは読みとれない。
「もう全部、終わらせてくれ」
殺すのか、殺さないのか。
構えたまま止まっている彼の背中を私は食い入るように見つめる。
「やーめた」
しばらく引き金に指をかけていた彼だったが、突如
鈍い音がした直後、脳震盪を起こしたのだろう吉岡さんは倒れる。
一体どういう心境の変化だろうか?
「殺して欲しいなら、殺してやらねぇ」
何とも天邪鬼な台詞に拍子抜けした。
なるほど、相手の喜ぶことをするのが嫌らしい。
殺してしまいそうだったら異能力を彼にかけちゃおうかな、と最終手段も考えていたからホッとする。
「ほれ、次は取られんなよ」
そう言って落ちていた銃を才木さんに投げて渡す。
陣内さんはそれから挟まれて出られない柴原さんを揶揄しに向かった。
からかいに行った彼を視界の端に捕らえながら、私といえば銃をホルスターに仕舞って吉岡さんの元に駆け寄る。
どのくらいの力加減で気絶させたのかは知らないけど警視庁に着く前にパトカー内で暴れられても困るからね。
体を麻痺させるデバフをかけ、私はドーパーを椿さんたちに引き渡したのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 104人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クロ(プロフ) - た!!!さん» コメントありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しく思います♪なるべく今日中に更新したいと考えておりますので楽しみにしてくださいな (8月23日 16時) (
レス) id: 6b6cbcfbd1 (このIDを非表示/違反報告)
た!!!(プロフ) - はじめまして!この作品読むの楽しくてつい一気読みしちゃいました!更新楽しみに待ってます!!! (8月23日 15時) (
レス) @page48 id: 07f2555b89 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:クロ | 作成日時:2025年8月6日 18時


お気に入り作者に追加


