4t ページ5
薬が効いて私が酔うまでには時間がかかる。
早めるために噛み砕いたものの、時間稼ぎをしないと異能力使用には厳しい。
苦みが広がる口内に、水筒のお茶を流し込んでから私はため息を吐いた。
それから態と足音を立ててドーパーの元へと向かう。
「な、何だオマエ!!」
コツコツと踏み鳴らして近づけば、未だ錯乱している男は震える人差し指で私に問う。
「あー、えっと…」
どうしよう、他の人に危害を加えないように興味を引く計画だったのだけど特に何言うか決めてなかったわ。
まぁ唸ってたら標的を別に変えるかもしれないし取り敢えず適当に喋ろう。
何とかなるだろ、うん。
「落ち着いてください。避暑してた、ただのパンピーです」
手を挙げてへらっと笑い、無害アピールすることを忘れない。
「私の名前はA。お兄さんのお名前を伺っても?」
こんな状況で自分に話しかける、制服を着た謎の学生に毒気を抜かれたのだろう。
男は、短くぼそっと呟いた。
「…辻川」
「辻川さんですね。教えてくださり感謝します」
こういう人に1番やってはいけないのは、否定すること。
何かの本で見たその一文を念頭に置いて私は高圧的にならないように意識した笑顔で言った。
肯定となる感謝は心のガードを解きやすくなる。
煽てすぎるのも良くないけど、真っ向から否定するよりは相手を冷静にさせられて鎮圧が容易になる。
先ずはここに来た理由を聞き出そう。
「辻川さん。今日どうしてここに来たのか訊いても構いませんか?」
「半年前の合併と共に、この会社に切り捨てられたんだ」
「切り捨てられた…それは、辛かったですね」
少し視線を下げて、低めの声で同意を示す。
けれども、ただ共感するのでは舐めてるのかといきり立つ可能性がなくもない。
その為、相手の言った言葉を一部私も言うことで理解しているアピールをするのだ。
「俺は!俺は何も悪くないんだ!!」
口を大きく開け、抑えきれない激情を露わにする辻川さん。
頭を抱えて怒鳴る男に、腰が抜けて立てながらも逃げようとしていたお客さんがヒッと声を漏らした。
「…ああ、拙い」
後ろから聞こえた怖がる声に、自分が何をしに来たのか思い出したのだろう。
彼は私から視線を外して叫んだ。
「社長を呼べ!早く!じゃねぇとコイツら燃やしてやるからな!!」
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クロ(プロフ) - た!!!さん» コメントありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しく思います♪なるべく今日中に更新したいと考えておりますので楽しみにしてくださいな (8月23日 16時) (
レス) id: 6b6cbcfbd1 (このIDを非表示/違反報告)
た!!!(プロフ) - はじめまして!この作品読むの楽しくてつい一気読みしちゃいました!更新楽しみに待ってます!!! (8月23日 15時) (
レス) @page48 id: 07f2555b89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2025年8月6日 18時


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