君影草 (ページ32)

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日本に来てから初めて自分から声を掛けたのがAさんだった。

確かあれは全校集会の時

「あ、アノ、資料クダサイ、」

『あ！リッキーくんー！はいこれです』

なんで僕の名前を知っているのか分かんなかったけど、一瞬にして彼女の人柄の良さが分かり、もっと関わりたいと思った。

「アリガトウ、オナマエハ？」

『みやもとAだよ！同い年だし、Aって呼んでね』

クラスが隣ということで席が隣同士だった。

日本に来てからずっと言葉が分からないまま生活していて不安でいっぱいだった。

そんな中で彼女はゆっくりとした口調で僕の顔色を伺いながら目を見て話してくれた。

それが嬉しくて。

話せずとも彼女を目で追っていたし、どうやったら話せるか考えて、実行しようとして辞めての繰り返しだった。

僕の胸から離れないA。
それがちょっと心地よかったりして。

『ごめん、ありがとう。ハンカチ、洗って返すね。』

「深堀するのは悪いけど、何かあったの？」

『リッキーくん日本語上手になったね〜！さすが吸収が早い！』

「ありがとう、笑」

泣いている理由は何となく交わされたけどまた今度ゆっくり聞いてみるとしよう。

「手、貸して。」

『うん？』

ギュッと握って歩き出すと彼女は言葉にならない言葉を発しながら着いてきてくれた。

可愛いな。

『リッキーくん、みんなに見られてるよ…』

「良いじゃん。僕もこういうのしてみたかったんだ」

『じゃあ、思い出として協力したってことにします、笑』