帰宅 ページ10
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『只今帰りました。』
伊「遅かったな、どうした?」
『兄さんと喋ってました。兄さんが師範によろしく
って』
伊「そうか。ちょうど休憩時間に入ったところだ。
稽古場に顔を出してやれ。」
『わかりました』
師範の稽古の仕方はちょっと…いや、だいぶ独特
だ。
肉体的にも鍛えられるし、精神が鍛えられる。
……多分。
『みなさん、お疲れ様です』
「継子の、えーっと…そうだ、Aちゃん!」
「もう、あの人ヤバいって…」
「俺死にそう」
「それだったら俺はもう100回くらい死んでる
さ」
『はは…お疲れ様です』
その後も隊士の皆さんの愚痴を聞いて、私にできる
限りのアドバイスをして、戻った。
伊「もう話は十分か?」
『はい!なんか皆さん疲れてらっしゃいますね』
伊「そりゃそうだろう。この頃の隊士は体力が無さ
過ぎるんだ。」
『そうなんですか…』
そろそろ陽も落ちる。夕飯の準備を始めた方がいい
だろうか。
ここに来ている隊士の方々の分も含めるから相当な
量になるだろう。
『師範、そろそろ夕飯の準備しますか?』
伊「あぁ」
『はい!とろろ昆布でいいですか?』
伊「…あぁ、頼む」
少しだけ嬉しそうな顔をした。
鏑丸もちょっと嬉しそうだ。
隊士の皆さんの分のとろろ昆布…
物凄い量だな。
伊「手伝う」
『えぇ!?師範は休んででも大丈夫ですよ?』
伊「いい。手伝う」
私よりも少し背の高い師範は隣でひたすら昆布を削
る。
鏑丸はうねうねと私たちの手元を覗き込む。
伊「どうした」
『え?あぁ、鏑丸可愛いなって』
伊「お前、蛇は怖がらない癖して蜥蜴は怖がるんだ
な」
『蛇は可愛いですよ?でも蜥蜴はちょっと…』
蛇みたいに滑らかな鱗は無い。
それがダメなのかもしれない。
自分でも何故蜥蜴が苦手なのかわからないが。
「伊黒さーん」
『?お客さんが来たみたいです』
伊「すまん、ちょっと出てきてくれ」
『はーい』
少し昆布の匂いがする手を入念に洗って戸を開ける
と、長い黒髪で中性的な顔立ちの人。
『時透…さん?』
時「来ちゃった」
『珍しいですね』
時「伊黒さんいる?」
『とろろ昆布作ってます』
失礼しますと声を掛けて上がって行った。
あの声量じゃ聞こえてないと思うのだが。
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作者名:三三七拍子(三度目の正直) x他2人 | 作成日時:2019年12月29日 21時