羽 ページ8
ガチャりと扉が開くこの瞬間を、側近は心待ちにしていた。
｢ただいま。｣
｢おかえりなさいませ、よくぞご無事で…｣
｢流石に1人でファミリー潰すのは疲れたわ、お茶くれる？｣
｢え、まさか、ボンゴレを！？！？｣
｢違うわよ、まぁボンゴレ本部も1日あれば落とせるんじゃない？｣
帰りが遅いと心配していた側近は、拍子抜けしたような気持ちだった。
Aが脱いだ上着を受け取りながら側近はタンクトップと短いズボンという薄着姿の身体を見る。
傷一つないように見えるがAは術士。
先日撃たれた横腹の傷が開いている可能性が高いのだ。
｢…大丈夫よ、傷は開いてない。｣
｢傷はってことは、他に怪我してるんですね。｣
｢そんなに疑わないでよ。｣
肉体的苦痛により不安定になる幻術、その穴を見付けることがこの側近である男は得意だった。
｢…ほら、やっぱり怪我してるんじゃないですか。｣
｢流石は元術士ね。｣
そう、彼は元々術士だったのだ。
肉弾戦の方が向いており、戦闘中に幻術を使えるほど器用ではなかったため今はほとんど使っていないがそれでもそこそこ優秀な術士だった。
少数精鋭を極めるニッビョファミリーにおいてAの側近に選ばれたこの男は実質的なNo.2にあたる。
幹部制度はなくボス1人の命令で全て決まっていたニッビョで、その存在は大きい。
頭を二つ持つことは分裂し片方が腐り落ちる危険を伴うため、このような体制をとる組織は少ない。
Aが側近に自分が持ち得る全ての権限を与えているのはそれだけ信頼していると言うことなのだ。
｢先日のキャッバローネ支部襲撃で負傷していた2名の回復は終了しました。明日の予定についてはボスが帰り次第通達と伝えております。｣
｢そ、ありがとう。｣
観念したらしいAは大人しく側近の手当を受けながら言った。
また、忙しくなりそうだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 14人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もこ | 作成日時：2019年2月8日 19時
