15 ページ15
私はお悩み相談なんか望んではいなかった。
ただ私の愚痴を聞いて欲しかった。
そんな私の心情を全て悟っている坂田さんは何だかちょっぴり恐怖に感じる。
この人は一見体たらくな人だ。
でもたかが数日の付き合いで分かる。
この人の力量はとても優れているって。
「桜木、今彼氏以外のことで気がかりなことなんだ?」
「彼氏以外のことで?」
「そそ。なんでもいい。職場がだるいでも家が汚いでも」
その時第一に思い浮かんだことはやっぱりしんちゃんのことだ。
でもそれを除いた時一番に気になるのは…
「……まだかぶき町に慣れないこととか、引越しの片付けが終わってないこととか…ですね」
結構下らないかもしれないけど、そのストレスはかなり大きかった。
ダイレクトなストレスではないからこそ蓄積されていく。
またそれらのストレスがあるからしんちゃんと衝突してしまうのかも。
こうした会話は自身のことを見つめ直すきっかけになっていた。
「んなもん簡単だろ。目の前にいるのは誰だと思ってんだ」
坂田さんの言葉の意味がよく分からなかった。
簡単?なにが?
私がもっと沢山地域のイベントに参加するとか?
仕事を早めに終わらせて片付けをするとか?
「はいハズレー」
「まだ何も言ってませんけど」
「大体考えてることは分かってんだよ。俺万事屋だから。そこんとこ分かってる?」
坂田さんの営む万事屋とは何でも屋のこと。
お金さえ払えば何でもしてくれる────
その瞬間私は頭が途端に冴えた。
私の顔を見て坂田さんはにっと笑う。
「まあ初回だし特別にサービス価格にしてやる。で、何を依頼したい?」
かぶき町に来てから分かったことがいくつかあって、そのうちの一つに万事屋が含まれていた。
街行く人が万事屋の存在を、坂田さんの存在を知っている。
もちろん全員が全員慕っているわけではないし、むしろ害虫のような扱いをしている。
それでも皆が彼を頼っているのが分かった。
私もまさに、そのうちの1人となった。
「……引越しの片付け、お願いします」
私のストレスが一つ減った。
増えていくだけのストレスが初めて減り、何だか心が軽くなった。
そしてこの時、私はしんちゃんのことを考えていなかった。
176人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凛 - とても良かったです!ゆっくりでもいいので更新待ってます! (2022年12月17日 17時) (レス) @page37 id: 0db889cc25 (このIDを非表示/違反報告)
のん@天使から墮天使(プロフ) - 瑠々亜さん» 返信、ありがとうございます!とういうことでしたか…なるほど。頑張ってください!応援してます! (2019年9月2日 20時) (レス) id: 8589870327 (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - のん@天使から墮天使さん» コメントありがとうございます。ちゃん呼びはただの愛称なので深い意味はないです(><)更新頑張ります! (2019年9月2日 14時) (レス) id: d64c66c7f1 (このIDを非表示/違反報告)
瑠々亜(プロフ) - 亜水さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けてとても嬉しいです(><)更新頑張ります! (2019年9月2日 14時) (レス) id: d64c66c7f1 (このIDを非表示/違反報告)
のん@天使から墮天使(プロフ) - 最初自意識過剰かなと思ってしまったけど…読んでみて良い話!夢主はなんで恋人のことを[〜ちゃん]と呼んでたのか知りたい…。夢主、辛いだろうなぁ…僕は恋人なんぞ居ないから分からんが…別れてしまえ((酷い 銀さんとくっ付けぇぇぇ(( 更新頑張ってください! (2019年8月25日 22時) (レス) id: 8589870327 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:瑠々亜 | 作成日時:2019年8月17日 21時