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「石燕、帰るぞ。」

「はい。…鏡花ちゃん。」

「?」

「またね。」




花咲くような笑顔で鏡花に言う石燕。その後、国木田の車に乗り込む。





「何が『またね』だ。貴様ならあの小娘がどうなるか判っているんだろう?」

「えぇ。判っていますよ。」




唯の悪足掻きだった。鏡花に少しでも明るい世界に生きたいと思わせたかったからだった。



「ふん。それは、小娘にとって唯の足枷だぞ。」




石燕の考えている事が判ったのか咎めるように言う国木田。
そのまま、車は発進していった。









「敦が拐われただと?」

「は……はい。」

「選りに選って今ですか…」



谷崎の回答に苦虫を噛み潰したように言う石燕。

探偵社では、省庁幕僚の護衛依頼で大騒ぎだった。だから、捜索に割ける人手がない。






「助ける?なんで?」



そうけろっと石燕達に言う乱歩。


谷崎は、たとえ乱歩とはいえ、言っている事に理解が追いていない。







「…探偵社は、敦君を擁護施設ではないとおっしゃりたいのですか?」



石燕はそう言うとあり得ないといった顔で乱歩を見る。







「そうだよ?だってそうだろう?」





_____敦君は此処に正式に入社したのだから。






「でも、敦クンは探偵社の、一員で!_____」


「乱歩さんの言う通りだ。俺達が動くのは筋が違う。」








パシン





国木田がそう言うと冷たく乾いた音が探偵社内に響いた。




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作者名: | 作成日時:2021年2月28日 20時

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