【H×H】緋の欠片〜成長編〜【クラピカ】

#222 ページ36

*



＿＿拝啓、親愛なるA様



この手紙を読んでいるという事は、私が何かしらの不運にあってしまったのだろう。
お前だけを残してしまったこと、とても申し訳なく思っている。


さて、私が筆を走らせたのは他でもない、Aへの気持ちをここで完結させる為だ。


A、私は貴方のことが好きです。


何時だかお前は「私なんかのどこを好きになるの。」と尋ねてきた。その時は適当にはぐらかしたけど、別に思い浮かばなかった訳では無い。きっと言葉には表しきれないと思ったからだ。



出会った時から、お前は周りの事をよく見ることができる人間だった。誰よりも仲間の事を大切に思っていて、私が冷静さを欠いた時も必ず目を覚まさせてくれた。それから、時折幼さを見せることもあった。そんなお前の全てを愛しく思っていた。



…でも、それももう終わりだ。



先に述べた通り、これをお前が見ているという事は私はもう長くないということだろう。残された人間を遺言という名を借りて縛り付けることなどしたくない。

勘のいいお前なら気付いただろう。A、どうか私のことは忘れて新しい幸せを掴んでほしい。「これが終わったらプロポーズする。」なんて無責任なことを言ってごめんなさい。初めて恋を教えてくれたのが君で良かった。




クラピカ＿＿＿





*





「馬鹿……」






全てに目を通して、初めて出た言葉はそれだった。


コソコソ篭ってると思ったらこんな物を残していたなんて。





(貴方しか好きになれないから困ってるのに…何でそんなこと言うの。


何で私はクラピカのことを忘れた方が幸せになれるって決めつけるの。)






「…あれ？」






決めつける？
こうした方が幸せになれるって？





…それって、私がクラピカに為してきたことと同じだ。



彼の事を思ってるだなんて綺麗事を並べて、きっと自分の気持ちに向き合うことを恐れてたんだ。




*


ヒソカ『それが彼にとっての本当の幸せなのかい？』



*




そっか、あの時ヒソカはそれを…



知らなかった、信じて貰えないのはこんなに辛いんだって。





*

レオリオ『…なぁA、コイツに真っ直ぐ向き合ってやってくれねぇか。』


*





うん、私やってみるよ。

もう逃げない。





(分かったかも。心の蟠りの正体が。)

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