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再び ページ25

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帰り道。




夕闇は次第に空を低くして


二人の伸びた陰が舗道に並ぶ


杏寿郎の仕事の関係で会う時は決まって何時も夜になる前に別れた




家に近付いている途中、すぐ横にいる存在にバレないようにそっと隣を見て

また視線を下へ戻す




私はこの時間が好きだ

たとえ無言でも、杏寿郎といると

心が不思議と落ち着く




「っさむ……」



偶に吹く風はすっかり冷たくて、冬の匂いがした



「うむ、そうだな……」


「?」


「こうすれば、温かいか?」



ふと、温かい何かが自分の手に触れて包み込まれた



「っ、え」



「Aの手は冷たいな」


そう言っていつものように笑う杏寿郎。


手を繋がれたと理解するのに束の間の時間を要したと思う


自分の手に重なるそれは私のよりずっと大きくて

彼の積み重ねた努力の勲章を示すかのように逞しかった。


私の心臓はこの状況に物凄く音を立てて動き出したのに

杏寿郎は全くいつも通りでなんだか少し得も言えない気持ちになった



「……杏寿郎の手はあったかいね」



「俺は呼吸の仕方が違うからな!」



「ふ、何それ」


「うむ、Aには少し難しいかもしれないな」



「ええ、どういう事

……あ」




呼吸の何が違うのだろう、と杏寿郎に聞こうとしたら


鼻先に冷たい雫がピタリと落ちてきて思わず足を止める





「雪だ…………」



初雪。

しんしんと空から降る雪華(せっか)



ちょうど一年前も、同じ人と、見た



あの時と違うのは


私は家のベランダじゃなくて


ちゃんと地面を踏み締めているという事



突拍子もなく始まった関係が一年変わらずにこうして続いていったのだと思うと感慨深くて


温かな何かが迫り上がってきて鼻先がツンとなった




降り積もっていく雪がこの街を白く染めていくのを二人で眺める





……ああ


こんな日々がずっと続けばいいのに




そう願わずにはいられない





だけど



幸せはずっと続くものではないと

.




.





.

この時の私は知らなかった

束の間→←状況把握



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(プロフ) - ゆうさん» 再度コメントありがとうございます。とてもとても嬉しいです(;;)諸事情で完結まで時間がかかると思うのですが宜しければ何卒、気長にお待ちくださいませ、、! (2020年12月7日 23時) (レス) id: b76cd08d2c (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 更新待っていました!続き楽しみにしています! (2020年11月22日 2時) (レス) id: e0580f81f7 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - りりさん» コメントありがとうございます。そんな…何回も読み返していただいてるなんてとても嬉しいです( ; ; )ゆっくりになるとは思いますが今後ともよろしく致します、! (2020年11月22日 1時) (レス) id: b76cd08d2c (このIDを非表示/違反報告)
りり - すごく素敵なお話で何度も読み返しています!無理せず更新頑張ってください。応援してます! (2020年11月18日 20時) (レス) id: 100354a5be (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 梟と烏の羽にさん» コメントありがとうございます。そのように言っていただいてとても嬉しく感じると共に、心温まりました。今後ともよろしくお願い致します。 (2020年11月14日 1時) (レス) id: b76cd08d2c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年3月6日 0時

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