色褪せた思い出の中で。【文スト】

26話 ページ29

希side

死にたいと思った。

お兄ちゃんがこの世にいないのなら
何としてでも死にたいと。



お兄ちゃんに会いたい。
そればかり考えてた。

この世を敵に回したとしても

私の記憶にいるお兄ちゃんは
とっても優しくて
たくさんのことを教えてくれた。

だが、いつしかその大きな背中は見ることがなくなったんだ。



もうあの手で撫でてくれることも。

抱きしめてくれることも

名前を呼んでくれることもない。



お兄ちゃんは私の事など忘れてるだろうか。
なんとも思っていないのだろうか。

会いたいと願っているのは私だけなのだろうか。
不安になって仕方がない。







そして、ひとつ思った。
『明星の願い』
時間を巻き戻すことが出来る。

30分以上巻き戻すと死に至ることもあるとされる
危険な異能力。
使い所によっては有利な異能力。


世界の時を巻き戻して
お兄ちゃんと暮らせるようにすればいい。

もし失敗しても死ぬだけだ。
どうせ、世界に見捨てられたし

何があっても失うものなどない。

大丈夫。

希「大丈夫。


異能力 『明星の願い』」

カチカチと時間を巻き戻していく。


15分。

30分。


希「っ……。」

2日。

あぁ……。私が何十年も巻き戻すなんて
無理な話だったんだ。


でも、ここで諦めるわけにはいかない。

1年。

2年。

「異能力」







『人間失格』

希「っ！！」

意識が朦朧とする中、
見えたのが



＿









＿









＿









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＿









＿



泣きながら私を抱きしめる太宰だった。

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