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k『久しぶり(笑)』
ドアを開けた二宮さんが、なぜか笑った。
「ごめんなさい」
k『どうして謝るの(笑)
アナタが嫌なら、来なければいんだから。』
いつもの様にキッチンに立ちながら、曖昧に笑ってみせた。
「あの、」
k『ん？』
「お仕事の……道具は、」
k『うん。片づけた』
いつも、床にしきつめられていた無数の紙や筆記具なんかが。
何処にも見あたらない。
「それって、」
k『んー……何て言うかな。うかばないの。
だからね、ちょっとおやすみしようかと思って。』
「………、」
ふん。って鼻で笑った彼が、
k『そんなたいしたコトじゃないよ？
休憩。アナタもするでしょ？』
って。
カップを渡してくれた。
「いただきます」
k『そこはさ、ありがと。って言ってよ(笑)』
からんとした床に、腰をおろして。
揺れるカーテンを眺めた。
k『ねぇ。』
「はい、」
k『アナタを待ってる人。いるよね？』
「え？」
k『隠せてないよ？』
はっとして、首を押さえた。
k『知ってるの？ココに居るコト。』
「違います、」
k『ん？』
「そうゆうんじゃ、」
そこまで言ってから。
そこから先、自分が何を言おうとしているのか。
分からなくなった。
k『もう、来なくていいから。ありが、』
「何で？
二宮さん言いましたよね？」
k『ん。』
「来たくなくなるまで居ていいって、」
k『うん。』
「言い……ましたよね、」
甘い匂いが、近づいて、
k『ごめん。』
垂れた髪を、指ですくった。
k『泣かないでよ(笑)』
「泣いてません、」
k『俺にはそう見えないけど(笑)』
どうしてココに居たいのか。
何で涙が出るのか。
k『ごめん。
約束、破らなくちゃいけない。』
「やくそく？」
k『言ったでしょ。
身体は必要ないって。』
初めてココに来た日。
あたしが彼にした質問。
k『破ってもい？』
薄い茶色が、ゆらゆら揺れて。
すくった髪に、指を通す。
もしかすると、彼は。
いつも、いつも。
泣いていたのかもしれない。
遠くの、
大切な人をおもいながら
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作者名：とあ | 作成日時：2019年5月7日 19時
