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コートのポケットに手を入れながら、今朝のNEWSを思い出す。
今年は、暖冬らしい。
いつもの信号で止まると、吐いた息の白さに、
季節が変わったことを知る。
今年は、隣に。
手を繋いで歩く人がいない。
・
・
・
優太くんが、初めて大きな声を出したあの日。
何か、答えなくちゃいけないのに。
足が竦んで。
立っているのがやっとだった。
それまで、見たことのない。
色のない眼が。
怖かった。
・
・
・
忙しいのは、いい事だと、思う。
考えなくちゃいけない事も、考えたくない事も。頭の中から消えて。
いろいろな事を、思い出さなくていいから。
なのに。
あれから、ずっと。
優太くんの眼が。
脳裏に、まとわりついている。
・
・
・
r『おかえり』
年末になると帰ってくる弟が、TVの方を向いたまま。
振り返らずに言った。
「…ただいま」
着替えようとクローゼットに向かうと、
r『誰かに取られるぞ』
背中に声がぶつかる。
「……、」
r『……ったく』
ふん。て鼻で笑うと、
r『おー、何してんのよ。
そう。ほんま？なら来るやろ？』
「(ちょっ、勝手に)」
通話の相手が誰かなんて、すぐにわかるから。
慌ててそれを遮る。
r『っるさ、え？ぜんっぜんよ。
いいじゃん。そうしなさいよ。
待ってるからな？絶対に来いよ？』
含んだ様に笑うと、リビングに戻った。
・
・
・
玄関のドアを開けると、いつもと違う匂いがした。
弟もあたしも履かない、VANSのスニーカー。
その隣に、自分のスニーカーを並べて脱いだ。
どんな顔で。
どんな声で。
どんな気持ちで、彼に会えばいいのか。
リビングのドアの前で、一歩も動けないでいると、そのドアが開いて、
k『ただいまっ』
いつもの、彼の笑顔が出てきた。
「……おかえり。じゃない？」
k『え、違うよ。俺が帰って来たから、まずはただいまだよ。でしょ？』
「……おかえり」
k『おかえり。あ、今度はまりさんが帰って来たからおかえり。』
毎日。この笑顔を思った。
他意のない、彼の、笑顔だけを。
「……、」
怖かったんだ。
彼を、失うかもしれない。
そのコトが、酷く。
怖かった。
続く (更新停止中)
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とあ(プロフ) - ユウさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。いただいた感想を励みに更新します (2019年4月1日 14時) (
レス) id: 86c2dc062d (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - 物語の空気感というか時間の流れ方がとても気持ちよくて一気に引き込まれました！岸くんの後輩感と男の子感と男の人感が可愛くて優しくて素敵な作品だなと思いました！！！今後の2人がとても楽しみです！ (2019年3月31日 20時) (レス) id: 111293a5e5 (このIDを非表示/違反報告)
とあ(プロフ) - いっくさん» ありがとうございます。気ままに更新ですが、見ていただけて嬉しいです (2019年2月12日 7時) (レス) id: 86c2dc062d (このIDを非表示/違反報告)
いっく(プロフ) - いつも更新楽しみにしています。岸くん大好きなので勝手にキュンキュンしちゃってます！ (2019年2月11日 8時) (レス) id: c15603ea35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とあ | 作成日時：2019年2月7日 22時
