貴方と【長谷川慎】 (ページ10)

今日:37 hit、昨日:13 hit、合計:86,593 hit

１０ページ10

makoto.

目覚めたときに、部屋はぐちゃぐちゃだった。

色々割れてて、歩いたらきっと危ない。

でも、俺はそんなのお構いなしに歩いた。

だって、Aのとこに行かなきゃ。

「 Aさん、おはようございます。

今日は海に行きましょう」

『 … う、み？』

「やばいくらいに綺麗ですよ。」

喋ったことに少し感動を覚えて、病院から特別に外出許可をもらったAさんを車椅子に乗せた。

タクシーなんて乗るわけにも行かないから、マネージャーさんに車を出してもらって。

マネ「 … その子ほんとにAちゃんなの？」

「当たり前ですよ、他に誰なんですか」

マネ「 … 」

マネージャーさんですら、Aを別人だと思っている。

それほどまでにAは痩せて、前みたいな元気がなかった。

「はい、着きましたよ」

『っ、』

「これが海です。」

Aさんに見せた海は、綺麗だった。

前に見た海よりもずっと。

『な、んで、ないてる、？』

「えっ、？」

俺は、いつの間にか泣いていた。

なぜかわからない。

景色に感動したのかもしれない。
　

きゅっと、掴まれた裾にはとても力がこもってて、俺を心配してくれていた。