206 ページ7
｢ごめんな、怒ってもうて｣
｢っ…！いや、｣
｢俺が全部悪いんよ｣
彼はだいぶ落ち着いた様子で、涙を拭いながら私にそう言った。
私は動揺で上手く喋ることが出来ず、言葉に詰まってしまう。
彼女が死んでしまったのは明らかに私の落ち度だ。助ける手段はあったのに、私が迷ってしまったから。
オスマンは抱き抱えていた彼女を床に横たわらせ、手ぐしで髪を整えた。
すると、外から再び忙しない足音が聞こえる。
私を抱きしめていたゾムの手が強ばり、ぐっと頭を胸元に押し付けられる。
｢…お〜！おったおった____ってどういう状況？｣
｢……っなんやシャオロンかよ！びびらせんな！！｣
｢シッマにオスマンに……それ誰？殺したん？｣
シャオロンの心無い一言は、この気まずい場を凍らせるのには十分だった。
空気が凍ったのを察したのか、彼はすぐに話題を変える。
私は彼の抱擁から解放されたあと、今度はシャオロンが私の肩を叩いた。
｢むっちゃ酷い顔してんで、お前｣
｢…………そうですか？｣
｢おん。ブッサイク。おら、笑っとけ｣
｢いっ！｣
酷い、と言おうとしたところで片頬を引っ張られる。
こんな状況でも雰囲気を和ませられる彼に関心しながら、引っ張られた頬をさすった。
そしてゾムが男の傍まで近付き、転がっている録音機を踏み潰した。
｢……ハァ。シッマ運ばんとあかんな｣
｢そうやね、俺も手伝う｣
｢マンちゃんはその子運びや。遺体持って帰ってやり｣
｢………え、｣
彼は目を見開いてゾムを見る。
ゾムはコネシマの脇に腕を滑り込ませ、肩を担ぐようにして立ち上がった。彼はオスマンに早くと催促して、扉の方へ向かう。
｢シャオロン、Aのこと頼むわ｣
｢おう。任せとけ｣
｢あとこれ｣
ゾムがポケットから取り出したのは、私が彼に渡した小さなポリ袋である。
その袋の中には少量のアンフェタミンが入っており、彼はそれを不思議そうな表情で見つめた。
ゾムは私の肩を叩き、また後でなと一言呟いてから部屋を出ていく。
オスマンはアンネスを姫抱きにし、私の目の前に立った。
｢これからグルッペンのとこ行くん？｣
｢はい。………アンネスさんの為にも｣
｢…………せやな。頼んだで、Aちゃん｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2439人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あまね(プロフ) - 完結！おめでとうでふ！ (10月29日 11時) (
レス) @page27 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
パリラ - 凄いですね、、、もう本当に好き過ぎて一日で読み切りました！ (8月30日 10時) (レス) @page27 id: 326cf2b718 (このIDを非表示/違反報告)
砂糖 - これめっちゃ前に見てそれからずっと探してたんですけどやっと見つけて徹夜で読みました、、！！スリルがあって何より菊さんが好きすぎて！！最高でした！！素敵な作品をありがとうございます！ (2022年5月4日 4時) (レス) @page27 id: 1132857e69 (このIDを非表示/違反報告)
輝月(プロフ) - 久しぶりに占ツクに戻ってきたら好みの作品見つけて一気に読んでしまいました！これは今後がとっても気になります！素敵な小説をありがとうございます！ (2021年7月22日 21時) (レス) id: 4cc550c3ab (このIDを非表示/違反報告)
アリス(プロフ) - みちゃくちゃ好きな作品！！！！完結？おめでとうございます！！オチ…みたいけどTwitterやってねぇ…！！ｸｿｩ…他の作品でも頑張って下さい… (2021年6月25日 22時) (レス) id: 5459160ee1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柚
| 作成日時：2021年3月23日 9時
