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「おはようございまーす」


そう言うと、過半数の人間からおはようございますと返答が返ってくる。
眠たげな目を擦って扉を開けたが、自分の席に向かう足取りは重い。

ここの人間は、全員白衣を羽織っている。私も例外ではない。
私の首から下げたネームには、役職部分に科学部薬品課研究員、と長ったらしく記入されていた。


「Aちゃん、傷薬のストックないから追加お願い出来る?」
「え!先日作ったばっかりじゃないですか」
「兵士たちが全部持ってっちゃったんだよね。10個ぐらい用意しときたいけど…一応500g作ったら声掛けて」
「分かりました」


自分の席に荷物を置き、薬品室に入る。
入った瞬間つんとした匂いが鼻にきたが、それももう慣れてしまった。
軟膏を作るのに必要な材料を取り出し、両手いっぱいにフラスコと薬品を持つ。
自動式のドアを通り、調合室に向かった。


「あれ、何作るの?」
「傷薬の追加分」
「あーね。今ピリピリしてるし、この際5000ぐらい作っとかね?」
「いやそれは作りすぎ!置く場所ないし」
「すぐ無くなるでしょ〜、傷薬どんだけあってもいいんだし」


そう言うと彼は、先程私が出入りした薬品室にスタスタと歩いていった。
先程菊さんから500作ったら言え、と言われたばかりなのにその10倍作ろうとしている。

確かに、最近は国勢自体いい雰囲気とは言い難い。
これから兵士の仕事も増えてくるだろうから、作り置きしておくのも一つだが何せ保存場所がないのである。



「いぇ〜〜〜、さっ作ろうぜ」
「ええ、まじで5000作る気?菊さんにとりあえず500って言われてるんだけど」
「だって軟膏パクられる度に作んのダルいし。何個あってもいいんだから大丈夫」
「まあ…そうだけど」


さてさて〜、と彼は私の不服な声に見向きもせず作業を始める。
彼は薬剤師の1人である。それなのに、調合する作業の速さは人並みではない。
名目上薬剤師であるのに薬を作成するのは、ここが如何にブラックな職場かというのを表していた。

そもそも、研究員は私含め5人程しかいない。
その5人で新しい薬を開発したり作成したりしているのだから、中々優秀な人材揃いなのだが、それを上層部はまるで評価しないのである。
こんな役職、辞めてやりたいのが本心だけれども、薬がなければ治る病気も怪我も治らない。
上層部は嫌いだが、善意の為に私は今働いていた。

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宇琉夜ハル(プロフ) - 後 side ほしいです (2021年4月30日 19時) (レス) id: c64b9591b6 (このIDを非表示/違反報告)
宇琉夜ハル(プロフ) - 後名前がわかったら zm「あ」 見たいなん欲しいです (2021年4月30日 19時) (レス) id: c64b9591b6 (このIDを非表示/違反報告)
宇琉夜ハル(プロフ) - 出来れば夢主のセリフ『』こうしてください 時間があればでいいんで (2021年4月30日 18時) (レス) id: c64b9591b6 (このIDを非表示/違反報告)
叶子(プロフ) - 晴さん» それは良かったです!!ありがとうございます!めちゃくちゃ遅れましたが見てますよ!!!頑張ります!!! (2021年2月21日 20時) (レス) id: 9eb6eeed7a (このIDを非表示/違反報告)
叶子(プロフ) - 通りすがりの亀さん» 最初はその予定でしたが、主人公が後悔することのないようにヘイトを向けさせて上層部をクズに仕立てあげました(^^ ありがとうございます!頑張ります!!! (2021年2月20日 21時) (レス) id: 9eb6eeed7a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年1月31日 9時

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