I don't fly ページ9
「っ、何処!アイツ?」
「ちょ、大きい声出さんといて、今よこちょ達が看てるからー」
「は?横山くん?」
「ちょお、急に動いたらあかんやろー!」
俺の事はどうだっていい。少し痛みは感じるが我慢すれば何て事はない。それに、痛みには強い方だと自負している。
鉄砲玉のようにベットを飛び出して、横山くん達のいる方へ向かう。
「あっ、亮ちゃん!もう大丈夫なん?」
急いで部屋のドアを開けると、マルがわざわざ椅子から立ち上がって心配そうに話しかけてくるが、それどころではない。
「なあ!横山くん!コイツ大丈夫なん!」
「熱が少しあって、あと、」
「あとは、何、」
「落ち着きって、別に…、何とも無い」
「嘘、嘘や、絶対何かある!」
俺の大きい声で目が覚めてしまったのか、薄く目を開けてこちらの様子を伺っている。
「あっ、起きた?」
マルが微笑みながら問うが、横山くんを見つめたまま、何か言いたそうにしている。
すると、
「ん、おはよぉ」
横山くんが、今まで聞いたこと無いぐらい優しい声で額に手を当てる。
「まだ、熱あるみたいやから、もうちょっと休んどき、な」
ベットの中で、今にも泣き出しそうに小さく頷くものだから、昨晩カクテルで冷ましたはずの熱が蘇る。
不意に、憂いを帯びた飴色の瞳に俺が映る。
「ぁの、ぁりがとう、ございました」
「えっ、ああ」
まさか話しかけられるとは思わず、素っ気ない言葉が出てしまい、誤魔化すように目を擦る。
一人取り乱す俺をお構いなしに、
「よう言えたな」
と、横山くんが幼い子供をあやすように、ふわふわの前髪を撫でる。
ぱっと見の年齢とは不釣り合いな扱いに、マルと目を見合わせて首を傾げると、
「今は休ませる方が先やから、説明は後でする」
と、横山くんが真剣な顔で呟く。
有無を云わせぬ雰囲気に、
「、おん」
としか返せず、マルと一緒に部屋を出た。
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作者名:柳 | 作成日時:2021年3月2日 17時