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「軽蔑した？」
「いえ…軽蔑は、してないです」
「俺が怖い？」
包帯の巻かれた細い指先が頬を撫でられるも体は震えることを忘れたみたいに、平然としている。神威さんが怖いわけじゃない。
力なく首を横に振りかぶり、血だまりの中 横たわる姿を黒い肩越しに見る。ほんの数分前まで生きて話をしていた。足を動かして傍に寄る私を神威さんは立ち尽くしたまま、何も言わない。
自分の意志で歩いているはずなのに足から感覚が失われていて、本当に自分の体なのかと疑いたくなる。
「……あたたかい」
両手でぴくりとも動かない手をすくい取れば、だらりと力が抜けていて重たくて体内に残る体温は生々しい。
「それに触っても帰れないよ」
「そんなつもりで触れたわけじゃ…」
神威さんは亡くなった人を " それ " と呼ぶ。
たった一言、呼び方一つで違和感が芽吹く。まるで物のような扱い。私には多分、真似できない。
目を開けたままの亡骸へ手を伸ばし、手のひらで瞼に幕を下ろした。この人にはいろいろと思うところがあったのに、いざ亡くなってしまうと複雑で、寂しさに似た感情が湧き上がる。
親しくもない人でこんなにも気持ちが揺れるのに、もしも家族や大切な人たちが自分の
(神威さんが居なくなったら、)
最強に近い戦闘力を誇ると言えど、これからも戦場に身を置く神威さんが無事でいる保証なんてどこにもない。
横たわる亡骸がこの世界で一番かけがえのない人に被って見え、背筋が凍った。力の抜ける指先を抑えながら神威さんを見上げる。
「か、っかか、神威さん。あああの…あの！」
「慌ててちゃわからないよ、落ち着いて。
なんだっけ。地球式の…、ん〜。あ、そうそう。あれだ」
私の前に腰を下ろすと「はい、ひっひっふー」と息を吐く。
あの。それは出産の時にお母さんたちが頑張るときに使う呼吸法です、神威さん。間違った知識だと突っ込みを入れる。すると神威さんは、にこりと笑った。
「どうだった？ 新しい世界は」
「…すごく重たくて、しんどいかもです」
「そっか。 歩けそう？」
「…？ 立てるとは思い…」
訴え掛けるような蒼い瞳に、ふと 気づく。
これは足取りを心配してのものじゃない。言葉足らずな問いかけに、私は血溜まりから重い腰を上げた。
「歩くのは苦手ですが、神威さんとならがんばってみたいです」
「…そ。 じゃあ、Aの頑張り見せてもらおうかな」
" 俺と一緒に歩けるか。 "
そう素直に訊けないのは、なんだか神威さんらしかった。
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めぐぽん(*´･∀･)(プロフ) - こんにちは！夢主さんが幸せでいられる事を願います。面白かったです。 (6月6日 10時) (
レス) @page42 id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
おふ - 一気読みしました！！(´TωT｀)まじ最高でした！！ありがとうございました！！！ (2022年9月23日 16時) (レス) @page42 id: 7784361647 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - うりえルさん» どれも私には勿体無いお言葉ばかりでじんわりきました…( ; ; )たくさんの素敵な小説の中 夢中になって頂けた事、嬉しいコメントも頂けてこの作品を書き始めて本当によかったです…！こちらこそ最後までお付き合い下さりありがとうございました！(*´▽`*) (2021年4月26日 20時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
うりえル(プロフ) - 完結おめでとうございます。まず私はこの作品が大好きです！毎回兎少年と一週間の更新を楽しみにしていました。最後までおいもさんらしくて涙が出てきそうでした。私は初めて夢中になった小説です…もう感謝しきれないほど…。兎少年と一週間制作、誠にお疲れ様でした。 (2021年4月25日 4時) (レス) id: 45d3b70981 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - 七瀬未来さん» な、な、七瀬さん〜！！ ありがとうございます！褒め言葉の胴上げに浮かれてしまいそうになりました…(*´ `*) 更新が止まってしまったりと予定より長引いてしまいましたが最後までお読み頂けてとっても嬉しいです(∩´∀`)∩！ (2021年4月21日 2時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おいも | 作成日時：2020年9月18日 1時
