兎少年と一週間(参)

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ぱっ、と浮かぶパフェが食べれる場所といえば、ファミレスやカラオケといった大人から子供まで気軽に入れる定番のお店。銀さんもパフェを食べに行くときは決まってファミレス。
これから神威さんと行くお店もそうだろうと手を引かれるがままついていくも、神威さんの足はファミレスを前にしても止まらず通り過ぎて行ってしまった。

ファミレスでなければ、残るはカラオケ。
しかし、似合わないお店トップ10に入るであろうカラオケの前も神威さんは素通りして行く。

どんどん賑わう町の中心部から離れていき、不安を抱き始めた頃 漸く神威さんの足は止まった。


「…ここは……」

建物全体がツタに覆われているそこは、一見パフェを提供するようなお店には見えない。
どんなお店なんだろう。下から上へ視線を動かすと木目の看板がツタにまみれてそこにあった。…『喫茶』と書かれている。喫茶より前に彫られてる文字はツタが隠していて読めないがどうやら喫茶店らしい。

立ち尽くす私をよそに、神威さんはガラス扉を引き開けると扉の上部に付けられている鈴がカラン、カラン…と店内に鳴り響いた。

「いらっしゃいませ。二名様で？」

カウンターの奥から出迎えてくれたウェイトレスさんに頷き返せば、笑顔で窓際のボックス席へと案内された。

(…あ、この席)
窓の隙間から日の光がテーブルを照らしている。
夜兎族にとって日光は天敵。何本ものツタが窓を隠しているといっても直接当たるのはよくないと思い、神威さんより先に日当たりのいい席へ腰を下ろしてメニューを広げた。

「何にしますか？」

「これとこれ」

「じゃあ、私はこれにしますね。
すみません。 お願いします〜」

手を上げてウェイトレスさんを呼び、パフェとドリンクをお願いした。神威さんにしてはかなり少ない量だけど、朝ご飯済ませて来てるからかな。


「ここの制服、可愛いですね」

「ああいうの着たいの？」

「えっ。いえ、憧れはしても着たいとまでは…」

注文の品が来るまでの繋ぎにと話を振るも斜め上の返事が返ってきてしまった。

「……あ。 でも、着てみたい服はあります」

「へえ。どんなの？」

「神威さんのいつも着てる服です。
その服もお仕事の制服みたいなものですよね？」

「こんなのが着たいの？
女が気に入るようなものでもないと思うけど」

「そんなことないですよ。
私は着てみたいなぁって思っちゃいます」

漫画の人物が身に着けているものはファンにとっては特別なもの。分からないという風な顔をする神威さんに、憧れなんです。と後押して笑みを浮かべておいた。

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