二十三兎 ページ25
オレンジ色の夕日がかぶき町を色づかせ、はやくお家に帰りなね。と、道行く人たちの影を伸ばす。
道端で遊んでいた子供たちは親御さんと手を繋いで楽しそうに会話を弾ませている。まるで絵本のワンシーン。
小さい頃 夕方の鐘が鳴って、そろそろ帰ろうかなってときに買い物帰りの母と会い「一緒に帰る?」なんて声をかけられたこともあった。懐かしい。…本当に、懐かしいなぁ。
「ワン!」
顔を俯かせ、自分の影を呆然と眺めていると定春くんが私の背中を押した。
「ごっごめんね。 早く帰ってご飯にしたいよ…ね、」
「おかえり。 メガネくんとのデートは楽しめたかい?」
前から軽快な声が降ってきた。
あ、神威さんだ。向こうから話しかけてくれたのはいつ振りだろう。 偶然会ったことや心当たりのない文句よりも先にそんなことを思ってしまった。
私もおかえりなさいって言わなきゃ。あ、あの話もしておかないと。真選組の人たちには話をしてあるから後は神威さんに。銀さんたちにはまたみんな揃った時にでも話せれば……その前に私が流してるこの無言タイムをどうにか終わらせないと。
「神威さんもおかえりなさい。今帰りですか?
こんな所で会えるなんてびっくりですね。へへ、偶然でも会えて嬉しいです」
「疲れた体引きずって帰ってみたら居ないんだもん。
だから、探しに来たんだよ」
右ストレートを打ち込んだら見事なカウンターが返ってきた。 最近は万事屋で顔を合わせても素っ気ない態度しか見せてくれなかったのにこんなのズルいです。
「サダオ、
「あ…帰しちゃうんですか?」
「俺と二人は嫌?」
渋る私に神威さんは一歩も譲らない。
今日一日一緒にいてくれた定春くんを一人、いや一匹で帰すのは胸が痛む。 定春くんは気にしないでと慰めるように頬を舐めてくれる。
「…最近 神威さんにかまってもらえなくて寂しかったんです。だから、こうして時間をつくってもらえるのはすごく嬉しくて。でも定春くんを蔑ろにはしたくないんです」
舌が絡みそうになりながら子供じみた想いをポツリポツリ伝えた。大人しく相手の反応を待つのは落ち着かず、気を紛らわせるように顎下を撫でれば、定春くんは気持ち良さそうに腕にすり寄ってきた。
「じゃあ、そいつは送り届けるとしてその後の時間は全部俺に頂戴」
「! はいっ、 私の時間で良ければいくらでも」
悩む素振りもなくあっさりと返ってきた返事に、安いものです。と はにかめば、神威さんはわしゃわしゃ。と私の頭を撫でた。
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めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - こんにちは!夢主さんが幸せでいられる事を願います。面白かったです。 (6月6日 10時) (レス) @page42 id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
おふ - 一気読みしました!!(´TωT`)まじ最高でした!!ありがとうございました!!! (2022年9月23日 16時) (レス) @page42 id: 7784361647 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - うりえルさん» どれも私には勿体無いお言葉ばかりでじんわりきました…( ; ; )たくさんの素敵な小説の中 夢中になって頂けた事、嬉しいコメントも頂けてこの作品を書き始めて本当によかったです…!こちらこそ最後までお付き合い下さりありがとうございました!(*´▽`*) (2021年4月26日 20時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
うりえル(プロフ) - 完結おめでとうございます。まず私はこの作品が大好きです!毎回兎少年と一週間の更新を楽しみにしていました。最後までおいもさんらしくて涙が出てきそうでした。私は初めて夢中になった小説です…もう感謝しきれないほど…。兎少年と一週間制作、誠にお疲れ様でした。 (2021年4月25日 4時) (レス) id: 45d3b70981 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - 七瀬未来さん» な、な、七瀬さん〜!! ありがとうございます!褒め言葉の胴上げに浮かれてしまいそうになりました…(*´ `*) 更新が止まってしまったりと予定より長引いてしまいましたが最後までお読み頂けてとっても嬉しいです(∩´∀`)∩! (2021年4月21日 2時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2020年9月18日 1時