兎少年と一週間(参)

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「鍵(これ)が欲しいんですかィ？
なら、その場にかしづいて足舐めろ。"ご主人様ぁ〜この雌豚めに鍵をお貸しくださ〜い" ってな」

「人って道徳を失うとこうなっちゃうんですね…。
あ、神威さんちょっとこっちに来てください」

指先でくるくると小さな鍵を回す沖田くんを横目に、襖の上に片足を乗せたままだった神威さんの手を引く。
神威さんは「ん？」と首を傾げるも襖を持ち上げにかかる私の行動を見て「ああ、忘れてた」そうカラカラ笑いながら襖の下敷きにされている神楽ちゃん救出に手を貸してくれた。
襖の下で伸びている手を握り、引っ張り出すといつもの日常風景に似つかわしくない沖田くんを視界に捉えた神楽ちゃんはみるみるうちに顔を曇らせていく。

「なんでここにサドがいるアルか」

「あのね、神楽ちゃん…」

神楽ちゃんの耳元に口を寄せる。
あのおまわりさんが襖蹴り飛ばして手錠までかけてきたんです。 そんな嘘半分の話をこの場で唯一自由に身動きがとれる神楽ちゃんに吹き込めば、一瞬のうちに沖田くんは窓の外へ飛んでいってしまった。…や、やり過ぎちゃったかも。

下の様子が気になって窓へ近寄ると反対側から手を引かれた。

「お腹空いた」
「お腹減ったアル」

「…坂田さん起こしてご飯にしましょうか」

きれいにハモった兄妹二人に笑みを返す。
ここは二階で下はゴミ捨て場だし、沖田くんならこの高さから落ちてもきっと大丈夫だろう。お腹から猛獣の声を轟かせる二人を連れてリビングへ赴けば、坂田さんはぐうすかイビキをかいて寝ていた。


「坂田さん、起きてください」

「……んぁ？ …あ"〜…変態プレイは他所でやってくれ。うちには未成年がいんだよ…おやすみ」

揺さぶって起こすも私と神威さんの手錠を見るや銀さんは再び夢の世界へ旅立っていってしまった。

利き手を手錠で塞がれてしまっているから、銀さんに手伝って貰わないとご飯の用意に取り掛かれない。
神楽ちゃんは…ご飯に何かかける料理しかできないし、神威さんは息が合わずに台所が崩壊しそうで頼るに頼れない。

「朝ごはん、卵かけご飯でもいいですか？」

「もっとまともな飯は用意できないの」

「私、えっぐべねでぃくとってやつがいいアル」

こ、この反応、冷蔵庫の中に調理すれば化ける材料たちが眠っているのを二人とも知っている感じだ。

「…それじゃあ、坂田さんを起こしてもらってもいいですか？」

かなり手荒な真似になってしまうもお腹を空かせた猛獣が暴れだす前に起きてもらうしかない。
この数秒後 万事屋に銀さんの叫び声が木霊した。

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