平凡少女と兎少年(弐)

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「不審者の特徴は知ってるか？」

「…いえ」

「雨や雪の日でもねえのに傘を差した黒服の集団。 心当たりあんだろ」

「ありません、おやすみなさい」

「布団被って現実逃避するんじゃありません！ さっさと出てきなさい、母さんタケシの顔が見たいです！」

「ギャー！返してください私のお布団！！」

お母さん口調で布団を引き剥がされた。
逆に引っ張り返し抵抗すれば「タケシ！お母さんはアンタの為を思って…！」と謎の熱演を見せられた。私の名前はAです。

「ちょっと何やってんですか銀さん！」

「見りゃ分かんだろ！？ タケシを外の世界に連れ出そうとしてんだ、よォオ！」

「誰と間違えてんだァ！？ それAさん！
神楽ちゃん、銀さん止めるの手伝って！」

「病人に何してるアル！このくそ天パァァァ！」

「おい、やめ、ヒデブッ！」

布団引張合戦の中 帰ってきた神楽ちゃんの蹴りは見事銀さんの横顔に命中した。 部屋の端まで吹き飛ぶ銀さんを横目に新八くんが買い物袋片手に駆け寄ってくる。

「Aさん、大丈夫ですか？」

「さ、坂田さんよりはピンピンしてます」

片頬を痛々しく腫れ上がらせ、白目を剥いたまま引き摺られていく銀さんは明らか私よりも重症。

「寝込みを襲うなんて最低ネ。不潔アル」

「ばっかお前、あんな色気0襲うわけねーだろ。
銀さんのムスコにだって選ぶ権利くらい…」

「神楽ちゃん、明日燃えるゴミの日だから身ぐるみ剥いでお外にポイしましょうポイ！」

「わかったアル！」

「テメッ 海賊の血ィ騒がしてんじゃねエエ！」

「ち、違いますー。私は悪いことには手を出してませんー！あくまで雑務担当でしたー！」

「証拠はあるんですかァ〜？
何月何日何時何分何秒、地球が何回まわった時、」

「二人してなに言い争ってんですか！
Aさんも寝てください！」

「今時の小学生でもこんな喧嘩しないアル」

神楽ちゃんは銀さんを。新八くんは私を引き離せば部屋の戸を閉め切った。
段々と遠のく銀さんの声にどっと疲れが体にのしかかる。

「あんなの相手にしなくていいんですよ」

「つい…、！ 冷たっ…」

「これ貼って横になっててください」

買ってきてくれた熱冷ましシートを悪霊に御札を貼るかの如く早さで熱を持ったおでこに貼り付けられた。

ひんやり、浸透していく気持ちの良さに瞼が重くなる。お言葉に甘えて布団に潜ることにした。

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