平凡少女と兎少年(弐)

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「帰りたくない、か。
そんな誘い方どこで覚えたんだい？」

「あれっ 今日通訳の方は…！」

お客様！お客様の中に通訳係の阿伏兎さんはいらっしゃりませんか！

神威さん一人で地球に来ているとは考え難いので電柱、路地裏、…隠れるに最適な場所に次々目を向ける。阿伏兎さんの姿形を探す中 後頭部に手を添えられた。

「余所見とは随分じゃないか。
アンタと話してるのは俺なんだから俺だけ見てなよ」

「ん゛…！？ 団長さんこそそんな台詞どちらで覚えて来られたんですか…！」

「アンタは俺のだ。絶対誰にも渡さないからな」

「本当に私が居ない間に何があったんですか！？
口調が迷子になってきてますし、最後に至っては棒読みです！」

聞いてるこっちが恥ずかしくなるような台詞に鳥肌が立つ。別の意味で怖くなり、後退れば後頭部を引き寄せられて額と額がくっついた。

喋れば息がかかる距離に目眩がする。

「…A、」

「あら〜！ Aちゃんじゃない！今日の卵買えた？
……あらあらあら」

神威さんの言葉を遮るように言葉がかぶさった。
額が離れてから二人で私の後ろを見れば、スーパーでよくお会いするご婦人ことPさんが口元に手を当てて驚いた顔をしていた。

ぴ、Pさん……！ このタイミングで話しかけるんですかPさん！！私的にはありがとうございます！ でもこのまま行くとPさんの全体にピーがかかります、モザイクでピーってなる危険が…！

「あああの！団長さん！ この方は、ええっと…！ Pさんはすごく良い人で…！」

Pさん殺人事件は起こさせまいと一人慌てる私を余所に神威さんはPさんを一瞥すると私の横髪を耳にかけ、ゆっくり耳元に顔を寄せた。

「…邪魔が入ったから出直すよ。
次会う時までに考えといて。俺と来ること」

吐息混じりにしなだれかかるような声色で囁くと神威さんは人混みの中へと消えていった。強引に連れ戻されると半ば覚悟はしていたのもあり、選択肢を与えられた事に驚きいる。

Aちゃん？大丈夫？と心配するPさんの声がやけに遠く感じられた。

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