平凡少女と兎少年(弐)

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初めて聞く話に、自称町の情報通の神楽ちゃんを見る。大きな瞳を瞬かせているのでどうやら神楽ちゃんも知らないようだ。

「ふ、不審者ですか？」

「私も噂で耳にしただけだから詳しい事は知らないけど、女にばかり声を掛けてるって話だよ」

なんとかに煙は立たない。かぶき町の治安は決して良いものとは言えないがそういった噂が流れるということは、結構危ない話なのかも。
そういえば、今日新八くんが姉上が心配なので帰りますと早上がりしていた。時間を気にしていたから近藤さんのストーカー防衛に赴いたのかと深く追求はしなかったけれど、噂を聞いて心配していた可能性もある。

「ご心配ありがとうございます。気を付けて行ってきます」

「大丈夫ネ。何かあったら私がAを守るアル」

「えっ…神楽ちゃん好き……！」

実力容姿共に完璧な神楽ちゃんにそんなことを言われてときめかない訳がない…！
トゥンクトゥンク、とリズムを刻む効果音を口に出せば「アホやってないでさっさと行って帰ってきな」とお尻を叩かれた。





▽

「A、A！ あれ！あれも食べたいアル！」

「よ〜し！ パパ、今日は何でも買ってあげちゃうぞ〜！」

「ほんとアルか！？ 銀ちゃんと違って太っ腹ネ！
ビスケット100個追加で！」

「ひゃ！？ 100個はいけません！
すみません、10個！10個でお願いします！」

予想外の数にストップをかければ、えー！ と隣でブーイングが飛んでくる。0が一つ多いからダメです！
無視してお会計をお願いした。

それでもついつい 神楽ちゃんの可愛さにお財布の紐を緩めがちになってしまう。
一般家庭の倍注文したせいか、やや引き攣った笑顔のまま奥の厨房へ走って行ったレジのお姉さんを眺めていると、左手をぎゅう、と柔らかい何かが触れた。


「…ビスケット、もっと食べたいアル」

「ぐ…！で、でもね。お肉いっぱい頼んだからデザートは少な目にしないと」

「A…どうしてもダメアルか…？」

ど、どうする〜！？ アーイ●ール〜〜〜！
昔流行ったチワワに落とされたお父さんのCMが脳内で繰り返し流れる。ぐう天使…！


("──A、ホントにダメ？")


「…、」

ふと、神楽ちゃんと神威さんが重なって見えてしまった。
今頃どうしているだろう。神威さんを思い出すと胸の辺りが針で刺したように痛くなる。

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