平凡少女と兎少年(壱)

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第七艦隊とはまた違った異様で殺伐とした雰囲気が漂う母艦に足を踏み入れる。
あの後 上手く言いくるめられてしまい、やってきてしまった。どうしようめちゃくちゃ怖いしお腹痛い。

黒装束を身に纏い、番傘片手に長い通路を歩いて回る。
元々 母艦内に艦が着陸していた事もあり、検問されることはなくスムーズに入ることができた。女ということで珍しがられたけど、そこは "夜兎族" の名に守られるカタチになった。

「…あ、」

賑やかな音がする方へ進んでいくと大きなホールに辿り着いた。入り口から中を覗き込むと赤いコートを羽織った人達がチラホラ見え、その中に神威さんはいた。

「団長さん、団長さん」

ススス…と近寄り神威さんに声をかける。
食べかけのお肉片手にきょとんとした表情で頭から足先まで私を見やり、首を傾げた。

「こんな所でコスプレかい？
図太くなったね、アンタの足みたいに」

し、辛辣……！！
私が此処に来ている理由よりも先に心ない言葉を投げてくるところを見るに機嫌の悪さは続いているみたいだ。

「…ご機嫌斜めですか？」

「なんで？」

顔は笑っていても雰囲気や口調が有無を言わせない怒っている人のそれで。しかし、それを面と向かって言えば更に機嫌を損ねかねない。 …神威さんが神楽ちゃんみたいに分かりやすかったらよかったのに。

神威さんは、手に持っていたグラスの残りを一気に飲み干すと笑顔から一転。じとり、目が据わった。あ、これお酒だ。アルコールの香りが神威さんからする。

「そんな一気に飲むと体に悪…」

「ねえ、なんで起こしてくれなかったの」

「起こす？」

「まだAのご飯食べてないんだけど」

飛び飛びの話を整理する。
…朝食？ 今 朝食の話をされてる？ 間違いでなければ「お前が起こさなかったから朝食食いそびれたんだぞ。どう落とし前つける気だオオン？」ってことを言われている。

…。 い、今その話…！？ 確かに今朝も一緒に寝てました、枕として。
いやいやでも、おやすみからおはようまで一緒にいましたけど、私 声掛けましたよ！ ご飯作りに行ってきますって言ったら「卵焼き…」って返してくれたの覚えてますからね！可愛かったので！！覚えてます！！

「ちゃんと声かけましたよ…！」

「何？ 口答え？」

「すみませーん！お水ください！」

酔っぱらい上司の絡み方！！ 早くお水を飲ませてアルコール抜かないと五体満足で艦に戻れなくなる…！

ドリンクを配り歩くボーイさんから水の入ったグラスを受け取り、神威さんに渡そうと差し出すもグラスを見たまま微動だにしない。

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