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問題が解決したと知ったら喜んでくれるかな。
神威さんの元で負った疲労を背に、阿伏兎さんの部屋の扉を軽くノックをする。
「阿伏兎さーん」
「取り込み中だ」
「団長さんの縁談話なくなりましたよー」
「……何ィ!?」
驚きはしてもこんなにも食いつかれるのは予想外で、目にも止まらぬ速さで開かれた扉に額が激突した。
視界が揺れて眩い星々が飛び交う。め、め、目が開けられない…。
血相を変えた阿伏兎さんが白い世界にぼんやりと映る。衝撃から回復し切れていない私にお構いなしの阿伏兎さんは、物凄い力で肩に掴みかかってきた。
「いだだだだ!あぶっ、あああ阿伏兎さん!もげ!もげちゃうんで!! お揃いの義手になっちゃうんで離してくださいいい!!」
「そんな事より、嬢ちゃんやっちまったのか」
「そんな事じゃないですからね!? 私の腕そんな事で済ませられなくなっちゃいますからね!!」
落ち着いてください!そう叫んで漸く阿伏兎さんの馬鹿力から解放された。額も肩も痛くて泣けてくる。たんこぶ出来てそう、あとアザも。
阿伏兎さんは落ち着きを取り戻すと深く息をついた。
それに釣られて私も安堵の息をつく。
「…いつだ?」
「いつって…さっきです」
「そうか…間にあわなかったか。 悪かったな… 」
「? どうして私に謝られてるんですか…?」
扉の件のことを謝っている感じでなさそう。
噛み合わない会話が気になりつつも、娘さんは良い人だったので平気でしたよ。と、手振り素振り気にしてないアピールをしたら阿伏兎さんは怪訝そうに口を開いた。
「嫌じゃなかったのか?」
「と…特には…?」
問い掛けの意図はわからないけど、特別嫌な事があったわけでもなかったので、首を傾けながら答える。
すると信じられないという風に人の顔をマジマジと見てきた。どうしたんですか本当に!
「阿伏兎さん、今日変ですよ」
「変なのは嬢ちゃんだろう」
「? 私はいつも通りです」
「普通過ぎて逆に不自然だ」
んん…? やっぱり会話が噛み合っていない。
頭の悪い私でも流石に会話の違和感に気付いた。
「あの、私達何か噛み合ってない気がするんですが」
「奇遇だねェ。おじさんもだ」
何処からおかしくなったのか遡り考える。
嫌じゃなかったのか?よりもずっと前、阿伏兎さんが血相を変えて部屋から飛び出して来たくらいから何かおかしかったと思う。
そう思い返しながら、いつもの阿伏兎さんらしくなかったですよね、と訊けば顎髭を触りながら答えてくれた。
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おいも(プロフ) - いるあさん» ああありがとうございます…!!勿体無いお言葉に飛び跳ねてしまいました(´ω`)今なら木にも登れそうです!(∩´∀`)∩! (2019年10月12日 12時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
いるあ(プロフ) - とても面白いです、評価が少ないのが不思議なくらいです (2019年10月9日 7時) (レス) id: 12f9a783cd (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - あまいろさん» !!! お読みいただけただけでも嬉しいのにコメントまで…!ありがとうございます!5度見くらいしてしまいました(´ `*)続けて楽しんでもらえるよう精進します!L(´ω`)」! (2019年9月29日 18時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
あまいろ(プロフ) - とても面白いです!これからも更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2019年9月29日 13時) (レス) id: 441f1e9f18 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2019年4月5日 21時