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「臭くてすみません…生きててすみません…」
「はは、何言ってるの?」
「え?」
「作ってくれたんでしょ。匂いでわかるよ」
「……。カレーですか?」
「うん」
それ以外になにかある?とでも言いたそうな笑顔にぽかんと口が開く。体臭じゃなかった…!よかった……!!
「カレーなら調理場?の部屋に」
「じゃあ行こうか」
「あの、その前に阿伏兎さんを呼ばないと」
「阿伏兎?なんで?」
「できたら呼ぶように言われていて」
「ああ。いいよ、放っといて」
素晴らしい笑顔でバッサリ言い切り落とす神威さんからは、早くカレー食わせろさもなくば殺すぞオーラが放たれている。
大人しくついていくしかない、殺される。
阿伏兎さんには後で会えたら謝っておこう。神威さんの名前を出せばきっと許してもらえる。
そんな事を考えている間に前を行く神威さんとかなり距離が空いてしまった。
お腹空いてるんですか、だからそんな早足なんですか神威さん…!
追いかけるのが地味に大変で日頃の運動不足もたたり、軽く息切れしてきた。帰ったら軽いジョギングでも始めよう、そうしよう。一日で挫折しそうだけど…!
「大盛りでね」
「っは、はい…!」
調理場に着けば、神威さんは直ぐ近くの椅子に腰掛けて大盛りカレーを注文してきた。存じ上げていますとは言えずにこやかに答える。
大きめの白いお皿に大量のご飯の山を作りそこにカレーをかけてみれば、どこぞの料理漫画でみたことあるような大盛りカレーが出来上がった。
こぼれないよう、慎重にテーブルまで運ぶと神威さんは「おっ!」と歓喜の声を漏らした。珍しく目が開かれていて可愛い。ニコニコ笑っているよりも年相応に見える。
「いただきます」
手を合わせてからご飯を吸い込むように食べていく神威さんの姿に少し驚いてしまう。いつもより食べるのが早い。ただ一つの吸引力のCMからオファーが来るレベルの食べ方だ。
「おかわり」
「すぐ用意します…!」
あっという間に完食されたお皿にまたカレーとご飯をよそう。食べる、よそう。食べる、よそう……。それを何度も繰り返していたら、遂に鍋と炊飯器の中が空っぽになってしまった。
「ご馳走様」
「! いえ、お粗末さまでした」
丁度神威さんのお腹も満たされたようでおかわり地獄から解放された。…口にあっただろうか。お皿を下げながら、こっそり様子を見てみると口の端についたカレーのルーを舌で舐め取っていた。不味くはなかったようで安堵が広がる。
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おいも(プロフ) - いるあさん» ああありがとうございます…!!勿体無いお言葉に飛び跳ねてしまいました(´ω`)今なら木にも登れそうです!(∩´∀`)∩! (2019年10月12日 12時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
いるあ(プロフ) - とても面白いです、評価が少ないのが不思議なくらいです (2019年10月9日 7時) (レス) id: 12f9a783cd (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - あまいろさん» !!! お読みいただけただけでも嬉しいのにコメントまで…!ありがとうございます!5度見くらいしてしまいました(´ `*)続けて楽しんでもらえるよう精進します!L(´ω`)」! (2019年9月29日 18時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
あまいろ(プロフ) - とても面白いです!これからも更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2019年9月29日 13時) (レス) id: 441f1e9f18 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2019年4月5日 21時