上機嫌 ページ4
−業務終了、これから向かいます−
翌日、定時きっかりに仕事を終えた私は、
プラタナスの並木路を足早に進む。
指定されたお店まで３０分ほどかかるので
何となく気が急いてしまっている。
私は、相手を待たせるのが好きではない。
焦らし戦法で待たせた方が良いという人も
この世の中にはいるようだけど、無理な話。
誰が相手でも変わらず１０分前に着くように
無意識に分単位で調整する性分なので。
でも、待つのは平気。
１５分でも３０分でも１時間でも構わない、
来てくれると分かっていれば待ててしまう。
それが重いって言われた過去もあるけど
これも性分だと諦めてもらうしかない。
それにしても。
日が長くなって春が近づいてるなあ。
終業時間になってもまだ明るくて暖かくて、
首元のスカーフが鬱陶しいと感じるほどの
ちょうど良い気温に、私の機嫌も良い。
手早くデスクを片づける私に向けられる、
小瀧くんの訝しげな視線も平気だったし、
大野室長がわざとらしく舌打ちしても
気づかない振りを通せた。
恋人に会う訳でもないのに、不思議よね。
櫻井次長が素敵だからいけないのよね、
なんて思っているんだから、重症かも。
全く恋ではなくて異性間の友情のような、
同志のような関係なんだけど。
地下鉄に乗るとまだラッシュではなくて
それも気分が良いなと思ったりして。
目的地が次の駅、というタイミングで
携帯が震えてメッセージの着信に気付く。
−翔くん、今日帰るんですって。
でね、私、明日のランチに誘われたの。
Aさんも一緒にどうかと思って−
本城さんからのお誘いだった。
うーん、今から次長にお会いするから
私は遠慮しておこうかな。
口裏合わせとか、面倒だしね。
それに、明日の午後は例の協会に行って
件の方にお会いする約束になっている。
ちょっと無理かな。
−ごめんなさい、お昼頃出かける予定なの。
また誘ってくださいね−
そう返信したものの。
私が行かなければ、櫻井次長と本城さんは、
二人でランチするのだろうかと気になり始め
そんな当たり前のことに、一瞬心が騒いだ。
いや、全然、普通のことだから。
部下の前ですら名前呼びを止めないような
親しさを隠そうともしない関係の二人よ？
楽しくランチなんて日常の光景なんだから。
浮かれていた気持ちがしぼんで重くなった。
重くなるとかおかしいでしょう、
私の感情が動く所じゃないはずだもの。
何度か首を横に振って断ち切る。
目的の駅に着く。
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おはな(プロフ) - あやかさん» 年末の始まり、彼を長時間目で追いかけて、でも物足りない。この感覚が続いていくんでしょうね。覚悟しないといけないかなと。お話の方は、ゆっくりじわじわ進み、戻り、だからこそ確実になっていく感じを楽しんで頂けたらと思います。常に確実性重視の次長ですからね。 (2022年12月4日 18時) (
レス) id: 87927db929 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - Virdさん» sweetなお話の中で少しだけ登場した相葉さんの想いを、どこかできっちり書きたいと思っていました。唐突過ぎたかなと思ったりしますけど、私個人は満足です。主人公の気持ちにも少なからず影響するかななんて、ネタバレです。コメントありがとうございました。 (2022年12月4日 18時) (レス) id: 87927db929 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - きーたんさん» きーたんさん、コメントありがとうございます。控えめになってしまう主人公の過去を重視してしまいます。挫折を知らない、無邪気さが周りにどう影響するかとか、NOTキラキラ組の私の癖ですね。明るく爽やかな恋なんてあるものか！なんて思いながら書いています。 (2022年12月4日 17時) (レス) id: 87927db929 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - にゃんさん» にゃんさん、こちらこそ本当にありがとうございます。ネガティブな感情が沸き起こる中、モチベーションを保ち続けるのは結構難しくて。でもですね、ふたりの僅かな変化を書くのは、とても楽しいんです。是非、良い時にまたお越しください。お待ちしています。 (2022年12月4日 17時) (レス) id: 87927db929 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ていくさん» 年末が始まり、ドームがイルミネーションに彩られるのを見て、寂しくなりました。なのでお話の次長は誰と見るのか？主人公となの？彼女となの？と、ひとりで盛り上がっています。コメントありがとうございました。次の更新に向け準備をしています。またお越しください。 (2022年12月4日 17時) (レス) id: 87927db929 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2022年4月23日 23時
