昔話�� ページ36
駐車場を出るともう暗くて
木々が風に揺れている音が怖い。
翔くんの腕にしがみつきながら歩く。
「A、結構怖がりだよな」
からかわれても怖いものは、怖い。
それに猛烈に寒い。
波音の大きさにも怯んでしまって
なぜここに来たのだろうかと後悔する。
街灯の下のベンチの前、彼が足を止めた。
「ここで、Aにキスした」
そうだったかしら？
唐突な言葉の後、肩に手が回った。
「真っ赤になって恥ずかしそうでさ、
もっと虐めたくていけない気持ちになった。
てことで、失礼する」
ふわっと近づいて啄むようなキスを２回、
３回目は押しつけるように、少し強く。
「やっぱり真っ赤だ。可愛い」
可愛いって、可愛いって、何よ。
言葉が出なくて、悔しいし恥ずかしいし
ときめくし癪に障るし、混乱する。
「いやあ、もう寒くてたまらん。
あそこのカフェに入ろうぜ」
ぐいぐい手を引かれて歩くけど、
ねえ、あなたの耳も赤いんじゃない？
言わないでいてあげるけど。
ここにあったカフェに入った記憶がある。
もうお店自体は変わっているけど、
何となくレイアウトが同じ感じがして
懐かしいなって声に出た。
「まだ気温が高い季節だったから、
Aはアイスミルクティーを飲んでた。
俺もアイスのカフェラテ」
流石に今日は寒いからお互いにホットにして
添えられた小さなクッキーも戴く。
「俺ね、気持ち悪いくらい記憶力が良いから
Aが着てた服の色とか覚えてんの。
綺麗なブルーで小さいリボンがついてた。
解きたいな、とか思ってたし」
「なに、それ、最低じゃない」
「男なんてそんなもんだろ。
今だってあんまり変わんないかもよ」
あえて反応はしなかった。
あらぬ方向に展開しそうだと思って。
翔くんだってそこが目的じゃないはずだし。
二人で行った水族館の辺りを回ってから、
映画を観た大きな総合施設に行き、
あの頃と同じ洋食のお店で夕飯にして、
楽しい時は続く。
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おはな(プロフ) - ともさん» 彼の変化に戸惑わせてしまったようで、申し訳ありませんでした。その理由を彼の言葉の中に含めたつもりでしたが、やはり力不足でした。努力しようと思います。ご指摘頂きありがとうございました。 (2021年4月3日 18時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 急に紳士な翔くんにちょっと驚きが隠せてないですが（笑）昔話を楽しんでいる2人がとても心地いいです。 (2021年3月28日 9時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - たまりんさん» たまりんさん、お返事が遅くなってしまってすみませんでした。年月を経ても想い続けた二人の一途さ、もう一息で願いが叶うところまできました。ホッとしています。辛い時間が長かったですよね。純粋だとシンプルになって飾らない言葉が嬉しい。伝わって良かったです。 (2021年3月27日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ていくさん» ていくさん、まずは、お返事が遅くなってすみませんでした。この更新分では、彼がひたむきに語ってくれたので私的にはほっとしたところです。時間は要しましたが、饒舌な言い訳と圧倒的な言葉不足、陥り易い間違いに気付けて良かった。この後もお越し下さると嬉しいです (2021年3月27日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - おはなさん更新お疲れ様です。やっと、やっと翔くんと通じ合えた。気持ちではあの頃と同じ様に2人は想いあっていたけど、若さゆえなのでしょうか。どこかでやり直しがきくと思っていたのでしょうか。大人になった今だからこそ飾らない言葉が相手に届くと思いました。 (2021年3月20日 7時) (レス) id: 73cb3c7af7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2021年2月7日 0時
