自然に ページ16
うっかりしてた。
１９時の主要駅周辺で駐車できる訳がない。
大きなロータリーを前に茫然としていると
携帯が震えた。
−駅を背に右に曲がって−
−大きい本屋があるから、その前にいる−
返信しようと指を動かす。でもその前に、
−急がなくていいから−
−結構人が多いから気をつけて−
そんな気遣いまで送られてきた。
何て言うんだろう、望まれている優しさを
正確に察知する能力があるのよね、翔くん。
だからモテちゃうのかな、きっとそうね。
中学とか、ううん、もっと小さい頃からの
積み重ねがあるんだと思う。
保育園のママたちにすごく人気があったし
大学でだって後輩に先輩に、皆に好かれて
講義の時の隣の席は、争いの元だった。
そこに必死にしがみついていた私を、
仕事後で疲れているだろう彼が待っている。
「やだ、寒い」
夜に吹く北風は、猛烈に冷たくて凍えそう。
襟元のファーをきゅっと締めて歩き出す。
幅の広い横断歩道を急ぎ足の人が交差して
平日のありふれた光景が流れていく。
ごろごろと鳴るキャリーの音が紛れる中、
私だけが浮かれているようで、恥ずかしい。
もうね、何メートル先だろうと分かるの。
車の外、パーキングメーターにもたれて
斜め上に視線を上げている姿。
空を見てる？それとも冬の星座？
あ、今日は満月なのね、すごく大きい月が
重く輝いている。
人の流れの中で足を止めて月を見上げた私が
目立ったのかな、彼の目に捉えられる。
ふわりと笑顔になってこちらに歩き出した。
「おかえり、A」
「うん、ただいま」
私の手からキャリーをそっと譲り受けて
後部座席に乗せると助手席に促される。
「今日、寒いよなあ。
ロータリーまで行けなくて済まなかった」
そう言いながら動きは無駄がなくて
ごく自然に車は流れに乗って行く。
「夕飯、まだだよね？一緒にいい？」
「うん、そのつもり」
どうしよう、本当に自然に会話ができて
翔くんが私を嫌っていないって分かる。
それどころか、一緒にいたいって思わせて
都合のいい、甘ったれた期待を拒まない。
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おはな(プロフ) - ともさん» 彼の変化に戸惑わせてしまったようで、申し訳ありませんでした。その理由を彼の言葉の中に含めたつもりでしたが、やはり力不足でした。努力しようと思います。ご指摘頂きありがとうございました。 (2021年4月3日 18時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 急に紳士な翔くんにちょっと驚きが隠せてないですが（笑）昔話を楽しんでいる2人がとても心地いいです。 (2021年3月28日 9時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - たまりんさん» たまりんさん、お返事が遅くなってしまってすみませんでした。年月を経ても想い続けた二人の一途さ、もう一息で願いが叶うところまできました。ホッとしています。辛い時間が長かったですよね。純粋だとシンプルになって飾らない言葉が嬉しい。伝わって良かったです。 (2021年3月27日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ていくさん» ていくさん、まずは、お返事が遅くなってすみませんでした。この更新分では、彼がひたむきに語ってくれたので私的にはほっとしたところです。時間は要しましたが、饒舌な言い訳と圧倒的な言葉不足、陥り易い間違いに気付けて良かった。この後もお越し下さると嬉しいです (2021年3月27日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - おはなさん更新お疲れ様です。やっと、やっと翔くんと通じ合えた。気持ちではあの頃と同じ様に2人は想いあっていたけど、若さゆえなのでしょうか。どこかでやり直しがきくと思っていたのでしょうか。大人になった今だからこそ飾らない言葉が相手に届くと思いました。 (2021年3月20日 7時) (レス) id: 73cb3c7af7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2021年2月7日 0時
