運の悪さ ページ23
そんな想いが呼び寄せてしまったのか、
また同じ場所で翔くんに会ってしまった。
平日、木曜日の午後７時前、古い駅舎、
乾いた北風、足元から襲う冷気。
トレンチコートのボタンは全部止められて
シックな皮の手袋をしている。
これだけ多くの人が行き交う中なのに
翔くんの周りだけが光って見えるのって
私だけじゃないんでしょうね。
「また会えたね、A！縁があるな、俺ら」
向けられた屈託のない笑顔に胸が苦しい。
どうしてこんな頻度で会ってしまうのかと、
私は、縁と言うより運の悪さを感じている。
だって、会いたかった訳じゃないでしょう。
「いや、偶然も偶然だよな。
今日も俺は、猛烈に腹が減ってるんだよね。
付き合ってよ、夕飯」
「嫌よ」
即答すると、丸い目を見開いてから
いつものクリアな笑い声をあげた。
「返事、早過ぎ！しかし却下だな。
なあ、行こうぜ、また違う店に案内するよ。
はい、バッグ戴き！」
すばやく私のトートバッグを攫って
振り向かずにどんどん歩き出した。
「ちょっと、待ってよ、翔くん！
私、行かないって言ってるのに！」
翔くんの早足について行けなくなりそうで、
懸命に後を追う。
だってこの先にスクランブル交差点があるし
ここで見失ったら最悪だもの。
大きな通りなのに歩道が狭い所だから
人の流れが急だし、途切れないし、
焦って、慌てて追いかける。
小学生じゃないんだから、バッグを奪って
逃げるような意地悪しないで欲しいわ。
同じような背格好のビジネスマンが
こんなにたくさんいるって言うのに、
その隙間に見え隠れする翔くんの姿を
見失うことはなかった。
分かっちゃうんだもの、あなたの姿は。
それもどうしてか腹立たしいの。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 641人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おはな(プロフ) - mayuさん» mayuさん、楽しみと言って頂けることに安堵しました。そうですよね、素っ気なく離れて行った彼、また近づいてきた彼の真意を書かなくては。時間がかかってしまいそうですけど、またmayuさんに来て頂けるようがんばりますね。 (2021年2月2日 20時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - さる子さん» さる子さん、こちらこそ感謝の気持ちでいっぱいです。テンポよく更新できていた頃の感覚がなくて、愚痴の様なコメントを残してしまいました。彼の真意に辿りつくまで、しっかり書いていきますね。ありがとうございました。 (2021年2月2日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - たまりんさん» たまりんさん、少しペースは落ちているところ、コメントを頂きありがとうございます。彼の行動の一つ一つに意味があり狙いがあり、気持ちがあるのはもちろんです。それを何とかお話に乗せられるよう頑張りますね。 (2021年2月2日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
mayu(プロフ) - おはなさんの書くお話、言葉も、繊細な心の動きも丁寧に書かれていて、面白いです。翔くんは一体どうしたいのか続きが楽しみです！ (2021年1月31日 9時) (レス) id: 862aa3f0aa (このIDを非表示/違反報告)
さる子(プロフ) - ぜんぜん！がっかりなんて！楽しみにお待ちしておりました。おはなさんのペースで更新してけだされば。彼の真意を想像しながらまっていますので。更新に感謝です。 (2021年1月31日 2時) (レス) id: eb4a575f23 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おはな
| 作成日時：2020年12月25日 23時
