ひとひらの想い ページ9
吸い上げた煙が、口の中にこもる。
やがて吐き出したそれは、目の前を白く染めるのだ
ーー今は昼間のはずだが、見える景色はどれも
暗く陰険なものばかり。ここら一体はいつもそうだ
(・・初めてかもねぇ、あんな綺麗なお客)
乱雑に切られた黒髪はともかく、
端正なつくりをした顔の中に浮かぶあの鋭い目。
あれが私を惹きつけた。強い意志、歩く道。
スッと見据えるそれは、私にはないもので。
暗闇の中だと、一段と目立って見えた。
『ーーじゃあな』
なんともあっけない言葉を残して、
あの男はここを去った。例えば、キスをするとか
胸を触るとか、そんなことも一切無く。
あまりにサラリとしていて、拍子抜けたのを
覚えている。
何をしに来たんだといえば、きっとどこかの
情報屋か何かかもしれない。大友の情報を調べに
やってきた。やれやれ、とんだ仕事熱心だ。
こんなところまでくるんだから。
「あとを引く____、」
そりゃあ、時たま常連となってやってくる人も
いるにはいるが、・・それでも、客とは一晩だけの
夢の中。一晩だけの関係。
何の後腐れもない。ーーーはずなのだ。
これまでだって、この部屋でどんな男に
何をされようと、どれだけ甘い言葉を吐かれようと
何も思わなかった。顔も声も、一瞬のうちに忘れて
しまう。・・けれどあの男、
「また、会いたいと、ーー・・ッ」
御法度だ。こんな願いを抱いたところで、
私たちにはどうすることもできない。
ましてやあの男の目的はもう済んだ。
私に用はない。もう、来ない。一生。
「全く、人生ってのは世知辛い」
何も望みやしない。ただ生きるだけ。
ひたすらそれだけを思って生きてきた。
この闇の中でそう考えて生きるのは、とても楽で
苦悩して人に揉まれるより、遥かに利口だと。
ーーそうおもっていたのに。
あの男は、そんな私の中に、いとも簡単にその存在を植え付けていった。
苦笑を漏らした私の耳に、ちょうど襖を開ける音が
聞こえ、次に店主が顔を出した。
「ーーーA。・・真昼間だが、客だ。
うるさくてかなわねェ」
「お好きに」
上書きなどできるわけもないが
それでも、ーー今の私は、この消し方しか
思いつかないのだ。
170人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シュシュ☆☆(プロフ) - ややさん» ありがとうございます!嬉しいですっ!!読んでくださり、感激でいっぱいでございます!がんばります! (2018年2月1日 20時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
やや(プロフ) - 凄くいい話ですね尊敬しましたこれからも更新頑張って下さいね!!! (2018年2月1日 19時) (レス) id: 551e634984 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございます!土方さんは、実は優しいんじゃないかな?というのが私の妄想です笑。きっとピンチに助けに来てくれるはずです!あと少し、お付き合いいただけると嬉しいです! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 愛音さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!ちょっと土方さんがヘタレになってしまいましたが…最後はきっとビシッと決めてくれるはず…です!頑張ります! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます!何とか一巻完結ということで、どうなるのやら私もわかりませんが、頑張って収めたいと思います!どうぞ楽しんでいただけると光栄です! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:シュシュ☆☆ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月4日 1時