【銀魂】闇に酔う悪魔

絡め取られる ページ5

ー土方サイドー




女は、まっすぐにその視線を俺に向ける。
見つめられれば、絡め取られたように目が離せない

これが、こいつのテクニックなのか、
ーーそれとも内からくる何かが、相手をそうさせる
のか、定かではないが。






「・・そんなに警戒しなくてもいいじゃないか。
とって食ったりはしないよ」


「ッ、あんた、」

「私はね、別にこの店に愛着があるってわけじゃ
ないからね。どうなろうが知ったこっちゃない」




そいつが動くたび、
上等な着物の裾がゆらりと揺れる。

赤地に金の刺繍糸で彩られたそれは、
Aによく似合っていた。






「で、どうなんだい？今度は正解？」




ーーーどうにも、観念した方が良さそうだ。
この女相手に、これ以上どう誤魔化そうが、
きっと騙されちゃくれねェだろう。

直感的にそう思った。







「・・・何故わかった」


「カタギかそうじゃないか見分けるなんて簡単な
ことさ。私は毎日こっちの人間を見てるからね。
お兄さんは、なんとなく違ってたってだけさ」


「なんとなく、か」

「そ。雰囲気とか、立ち振る舞いとか」





そういって、またキセルに口をつける。

うっすらと灯りの灯ったランプの火が、
Aの吐き出した息でゆらりと揺れた。









「ーーーいいよ」

「は？」

「私のわかることは教えてやるって言ってんのさ」




その横顔から、何かを読み取ることはできなかったが、・・こいつにとって異質の存在である俺と
話をするというのは、少なからず警戒が伴うことではないだろうか。だがしかし、発せられる声は
どこか余裕でゆったりと。





(・・得体がしれねェな)





「あんたの正体を探ろうってんじゃないから
安心しな。ただ、普通の男と話せる機会なんて、
そうそう無いからね」


「なるほどな」





完璧なほどに、落ち着いていて、
ーー完璧なほどに、綺麗な笑み。それでいて、
凍りついた瞳には、何も映っていないように見える








「・・・なら、遠慮なく聞かせてもらうが」

「そうこなくっちゃ」





そんな瞳に、やはり吸い込まれそうな錯覚に
陥りながら、ーー俺は、気を取り直すように
言葉を紡いだのだった。

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