【銀魂】闇に酔う悪魔

取引 ページ38

「・・取引？」



お兄さんは、訳がわからないというように眉をひそめた。こくりと小さく頷いて、私は重ねて口を開く






「あんたは、裏世界の情報を求めて
私に会いにきてるだろう？」


「・・そうなるな」

「でも本来の遊女の使い方ってのはそうじゃない。
お兄さんにだけ、特別に許可してんだよ？
でもそれじゃ、こっちも商売の割に合わない」





現実逃避だったり、愚痴を聞いてもらう相手だったり、欲を満たすためだったり、まあ人によって
様々であるが。







「ーーーだから、別料金を取ることにした」


「はぁ？」

「大丈夫。簡単なことだからさ」





思わず素っ頓狂な声をだしたお兄さん。
・・まあ確かに、その反応は正しいものだろう。

なかば強引な取引だ。そんなことは、私自身も
痛いほどわかっている。




(それでも____、)




この人に会えなくなるのは嫌だ。
・・何とかして、繋ぎ止めたかった。









「ーーー・・キス」








あの日、この人が抱いた罪悪感が、苦悩が、
私と会うことを阻害するというならば、それを
取り除いてしまえばいい。






「私はそれで満足する。ーー立派な取引だよ」





目を見開いたお兄さんと、鋭い視線が交差する。

今は寒さなんて感じる余裕はなく。
ただただ、彼を見つめていた。








「・・だからこの前のキスも、ありゃ別途料金を
支払ってもらったってだけ。他に何も含まれてない

まあ説明もなしに無理やりもぎ取ったことについて
は悪かったけどね」


「そりゃあ、」
「今度からはそうしとくれ」





ずるい。

都合の悪いことに理由をつけて真実を覆い隠す。
裏の人間の得意技。


真っ正面から勝負できない私は結局、
ーーそうして、世界のやり方に頼るんだ。









「・・悪魔だね、やっぱり」


「あくま？」

「そうさ。お兄さんはその被害者」





仕方ないじゃないか。
私は、こんなやり方しか知らない。

大好きな人を、こんな手口で絡めとるように
繋ぐことしかできなんだ。



悔しさにも、情けなさにも、ぜーんぶに蓋をして、
私は彼に笑いかける。









「ーーーーまたきてね。待ってるから」





トドメのように、呪いの言葉を吐きかけて
私は席を立つ。お兄さんの呼び止める声も
スルーして、再び人混みの中へと身を投げる。


複雑な顔で私を見つめていたその人を、
またこうして縛りつけた。

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