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不便 ページ34

ー土方サイドー



見慣れた天井に上る紫煙。
嗅ぎ慣れた匂いを感じながら、眉を寄せた。




(・・一睡もできやしねェ)



昨日、最後にみた切なげな笑みが、
脳裏に焼き付いて離れねェ。

何一つ言葉をかけてやることもできぬまま、
黙って数杯、酒を流し込んだ。


どんなことを切り出してあの部屋をでたのか、
それすら思い出せないほどに、俺はあの時余裕など
手放していた。


呆然と屯所まで歩き帰り、布団に潜ったはいいが、
意識が闇へ落ちることはなかった。





ーーー拒めばよかったのだ。

そうすれば、あいつが罪悪感に埋もれることも
なかった。それによって傷つけることも。


何度振り返っても、解決策など見出せるはずもなく

俺は大きくため息をついて、机に突っ伏した。






「ーーーどうすりゃいい」



女を扱うことについて、面倒だと思いながらも、
経験がないわけではない。それなりに積んだものが
ある。・・そのどれも、いざという時には、
役に立っちゃくれねェ。








「結局、・・俺もまだ、ガキっつーことか」




一人の女に手を焼いている。
扱いきれず、戸惑って、挙句、ーー中途半端。


総悟の忠告が、当たっちまったわけだ


ふと視線を下ろした先には、いびつに曲がった指が
見えた。ところどころにある古傷は、俺が刀を振るい、人を斬ってきた証拠なのだ。

こんな手で、あの女に触れるなど、
やはり無理だった。不可能だ。ーーそれなのに。







(・・拒めなかった)



あの瞬間、あいつの一言にかまけて、身を委ねた。
とんでもなくズルく最低な行為。

細い指が、俺の頬に触れて。
柔らかく艶のある唇が、俺の唇に重なった。


ーーー上手いキス。だが、どこまでも遠慮がちな
それにふと、



"・・触れたい"と。




誤魔化しきれねェ想いが、湧き上がってきた。







「ッ、・・これだから厄介なんだ____、」




こんなモンは二度と俺に宿ることはねーだろうと
そう決めつけていたってのに。









(ーーー人間ってのァ不便なモンだ)





暮らしぶりや体の機能が便利になっていく一方で
内心はどんどん不便に、複雑になっていく。

懲りてない→←思い出に。



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎   
作品ジャンル:アニメ
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シュシュ☆☆(プロフ) - ややさん» ありがとうございます!嬉しいですっ!!読んでくださり、感激でいっぱいでございます!がんばります! (2018年2月1日 20時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
やや(プロフ) - 凄くいい話ですね尊敬しましたこれからも更新頑張って下さいね!!! (2018年2月1日 19時) (レス) id: 551e634984 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございます!土方さんは、実は優しいんじゃないかな?というのが私の妄想です笑。きっとピンチに助けに来てくれるはずです!あと少し、お付き合いいただけると嬉しいです! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 愛音さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!ちょっと土方さんがヘタレになってしまいましたが…最後はきっとビシッと決めてくれるはず…です!頑張ります! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます!何とか一巻完結ということで、どうなるのやら私もわかりませんが、頑張って収めたいと思います!どうぞ楽しんでいただけると光栄です! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:シュシュ☆☆ | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月4日 1時

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