【銀魂】闇に酔う悪魔

痛み ページ16

ー土方サイドー





「ーーハァ・・、疲れた」





久々にそう口に出した。

もちろん、あの2人の追求である。
総悟に関しては、やはりどこか勘付いていたようで

どこの風俗に行ったのかと問い詰められた。


闇遊郭に行ったとは、さすがに思わなかったらしく
不幸中の幸いというやつだ。
テキトーに巻いてきた。







(・・まあ確かに、普通じゃァなかったよな)



もちろん俺のことである。

相手の居場所は闇遊郭。違法営業だ。
その上翌日は仕事。


そんな条件下、俺は意味もなくそこを訪れていた。


ーーーーあの女に会うために。




一体あいつにどんな魅力があるというのだ。
どこにでもいる遊女。・・なのに、憂いを帯びた
あの表情が頭を離れない。

思い出すたびに、小さく体が痺れた。





一つ吹いた紫煙。いつもは頭が冴えるそれも
今のフワついた気持ちを吹っ飛ばすには至らず。

肩を落とした俺は、乱暴に灰皿へと押し付けた。



じゅっ、と小さく音を立て、火が消えた。
頼りない煙が最後に短く立ち上っていたが、
それもやがて消えていった。


まるで、一夜の夢だ。
あの部屋であいつと交わした言葉も、
近くで感じた匂いも。




今あの場に行けば、元々店すら存在しねェんじゃ
ないだろうか。








「・・仕事、か」



俺が警察だとしれば、どうするだろうか。
一応、あいつにとっちゃ営業の敵だ。


ーーーいや、きっと、「見逃していいのかい？」と
悪戯めいた口調でそう問いかけてくるんだろう。




・・ふと、あいつの胸元に散らばっていた赤い花が
脳裏をよぎった。もしかしたら、今も新しいそれが
白い肌に散らされているかもしれねェんだと。


それは一つもおかしなことではない。
俺がどうこういうことでもない。ーーだがしかし、

小さく疼いた心臓は、確実に"痛み"を抱えていた。

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