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闇と光 ページ13

その人が腰を上げた。
畳みを踏む音が聞こえ、ーーやがて、私の近くで止まる。少し躊躇うようにゆっくり腰を下ろした彼を私はやはり、直視できなかった。






(・・なんだろうね、)



生娘でも何でもないくせに、
近くにいるだけで、こんなに胸が高鳴るなんて。

一体いつぶりの感覚だろう。・・いや、味わった
ことなんて、実はないのかもしれない。




ゆっくり、ライターを近づける。
お兄さんがくわえたタバコの先に、赤く灯った火は
その人が吸えば、さらに赤く色づいた。

男の人のタバコに火をつけるなんて、
そんなもの、これまで幾度となくやってきたことだ

それなのに、かすかに震えた手は、一体何を
示しているのだろうか。


出会って2回目、特に会話を交わしたわけでも
触れ合ったわけでもないのに。





(ーー憧れ、)



そう。それだ。
強く、自分を見据えて生きる"侍"の彼に。

そうでなければ説明がつかない。

何もかも捨ててここにいる私が持てる感情など
最早ないのだから。






「どうだい。美人につけてもらったタバコは」

「自分で言うか」

「嘘言ったつもりはないよ?」




紫煙が舞う。一瞬彼の顔を隠して、消える。
それがいくらか繰り返された後、「・・うめェよ」
と、呟くような答えが返ってきた。


驚くほど単調で何もない時間。
けれどもそれは驚くほど心地よくて。
物足りないなんて感じなかった。


ーーただ、この空間が永遠に続けばいいのにと
そう強く願うだけ。






「・・侍ってのァ、別に強いわけじゃねーよ」

「え?」

「あんたらと同じだ」



ランプの火が、切なげに揺れた。





「確かに、己の義ってのァあるさ。・・だがそれは
あんたらが行先を闇で隠しているのと変わらねェ。
結局俺たちゃそれに縛られる。手前ェ自身で定めた
掟を破らねェよう、格好つけて背伸びする。
毎日毎日、気ィ張り続けてんだよ。

ーーー信念ってのァ、呪いと変わらねェんだ」





悲観しているようにはきこえなかった。
彼はそれも承知して、・・それすらも受け止めて、
その上で"侍"として立っている。

それは、とても私たちと同じとは言えないほどに、
立派で輝かしくて。





「やっぱ、イイ男だよ、あんたは」





光を示すように、魅せるように。

闇の中にうずくまっていた私を、
何とか歩き出そうともがかせる。

察しがいいこと→←もどかしく



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎   
作品ジャンル:アニメ
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シュシュ☆☆(プロフ) - ややさん» ありがとうございます!嬉しいですっ!!読んでくださり、感激でいっぱいでございます!がんばります! (2018年2月1日 20時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
やや(プロフ) - 凄くいい話ですね尊敬しましたこれからも更新頑張って下さいね!!! (2018年2月1日 19時) (レス) id: 551e634984 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございます!土方さんは、実は優しいんじゃないかな?というのが私の妄想です笑。きっとピンチに助けに来てくれるはずです!あと少し、お付き合いいただけると嬉しいです! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 愛音さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!ちょっと土方さんがヘタレになってしまいましたが…最後はきっとビシッと決めてくれるはず…です!頑張ります! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます!何とか一巻完結ということで、どうなるのやら私もわかりませんが、頑張って収めたいと思います!どうぞ楽しんでいただけると光栄です! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:シュシュ☆☆ | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月4日 1時

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