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「どうゆうこと?」
ジャージを掴んでいた手が今度はがしっと腕を掴んでくる。
お互いの距離が、さっきよりも近くなった。
向こうは私を逃がすつもりはさらさらないらしい。
「だ、だって、わたし邪魔かな〜と思って」
「んなわけないでしょ」
ぼそぼそと理由を告げると、
眉間にシワをつくって軽くため息をついた。
「変なところで気をつかって」
「わ、私だって先輩だし、せめて胸を張れるような行動をしようと」
「胸を張るって、その絶壁……あ、いや、やっぱいいです」
「あんたいま私の胸みて言ったわね?」
私の胸元から目線を逸らす太一に怒りを覚える。
おい太一。私がどれだけ胸にいいマッサージをして、
あまり美味しくない豆乳を飲んで、
超盛れると評判のブラを駆使して生きているか。
知らぬであろう太一よ。
確かに『ぺたんこ』とはよく言われるけど、『絶壁』って…
なんか硬そうでイヤだ。
「やい太一」
「見てません」
名前を呼ぶとプイッと顔ごと逸らして知らんぷりをされた。
むっ!する事が可愛いかよっ!!
ギャップ萌すぎる。いかん。顔がニヤけそう。
でもダメよA。心を鬼にしないと!!
「もう、あんたって子は…」
「俺、Aさんとこうやって話すの嫌いじゃないです」
文句のひとつでも言ってやろうと開いた口は、
ぽつりと呟かれた言葉で遮られ、そのまま固まった。
え、……えっ?い、今なんて??
ぽかん、として太一を見上げる。
逸らしていた顔がこちらに向けられる。
私の方を向いた太一の目は静かなのに怖いくらいまっすぐで真剣だった。
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作者名:nome. | 作成日時:2017年2月12日 0時