もう逃げない ページ10
ソクミンさんは何度か謝った後
宿舎に帰っていった。
『はあ…』
私、何やってるんだろう。
年下を無理矢理家に上げて、好き勝手話して
戸惑わせて、あんな申し訳なさそうな顔に
させてしまうなんて。もう、情けない。
『諦めないで下さい、か…』
ソクミンさんの言葉は、飲み込むのに時間が
かかった。その理由の一つに、それらはとても
オブラートに包まれていた。私を傷つけない
ようにだろう。優しさを感じて、また涙が
出そうになる。
でも私はもう、逃げちゃ駄目なんだ。
諦めちゃ、駄目なんだ。
恋愛経験が少ないとか、イ・ジフンが
アイドルだとかは、言い訳にならない。
きちんと向き合わなければ。
リビングを歩き回りながら、足りない頭を絞り
必死で考えた。
思えば、イ・ジフンには悩まされてばっかりだ
宿舎の前で初めて会って介抱した時は職を
失うかと気が気じゃなかったし。
避けていたかと思えば突然私を好きだと言うし。
そういえば最初は嫌っていると
思われていたんだっけ。
“だってお前、返事くれなかったじゃん”
『…あ、』
この前貰ったノート、見てないや。
どこやったっけ…
ノートはバッグの中に入っていた。
私たちの全てが記されていた、このノート。
今回のいざこざの原因もこれだし、
良い意味でも悪い意味でもお世話に
なりっぱなしだな。
ソファに腰を落ち着け、ノートをゆっくり捲る
イ・ジフンとは一旦休戦しよう。
ぱらり、ぱらり。
懐かしいな…
ぱらり、ぱらり。
自然と頬が緩んだ。
ぱらり、ぱらり。
やっぱり、イ・ジフンの世界って面白い。
ぱらり、ぱらり。
少しは力になれていたのかな。
ぱら…
ドクッ、と心臓が跳ねた。
黒ずんでいるのは、恐らく何度も書き直した
跡だろう。
これまでより小さな頼りない文字と、その下に
綴られた丁寧な文字。
逸る気持ちを抑え読み終わった後、
私は部屋を飛び出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1516人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴ(プロフ) - ウォヌとミョンホ切なすぎて…そしてそれぞれ選んだ選択も、96lineそれぞれの心情も…なんか想像つきました…解釈一致っす…本当に素敵な作品見せて頂いてありがとうございました… (2月21日 4時) (
レス) @page41 id: 9dcff58a0e (このIDを非表示/違反報告)
名無し54892号(プロフ) - ウォヌペンな訳ではないですが、このお話では思わずウォヌウウウウウウウウとなってしまうぐらい切なくてとても良かったです（ ; ; ）主人公ちゃんが気付くシーン、セリフの言い回し等全てが素敵でとても感動しました！！96それぞれの目線でのお話も面白かったです！！ (2022年1月12日 23時) (レス) @page11 id: 1445cdbb12 (このIDを非表示/違反報告)
ミヌ - 夜中の1時過ぎにこんなに素敵なお話を見つけてしまい、7時間ぶっ通しで読んじゃいました。笑 私はウォヌとハオが好きなので、がっつり失恋しちゃってすごく悲しいですが、このお話のおかげでウジくんについて知ることが出来ました。ありがとうございました！ (2021年2月3日 8時) (レス) id: 8612cef835 (このIDを非表示/違反報告)
まーみや - ほしのキャラさいこぉ。。かわいい (2020年9月22日 11時) (レス) id: 54f59f67c1 (このIDを非表示/違反報告)
まーみや - うわぁ。。最高。頭悪い私にもわかるようにも少しわかりやすい言い回しして欲しかったけど、結果オーライです。ジフン、ユンギみたい笑かっこよかった！小さいけど！ (2020年9月22日 11時) (レス) id: 54f59f67c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆずテム
| 作成日時：2018年10月15日 23時
