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「オイ」
『あれ、旦那。今日はお一人で?』
神楽ちゃんがお泊まりをした数日後、鴨さんから頂いた刀の手入れをしていれば旦那が訪ねてきた。
見れば新八くんも神楽ちゃんもいない。
お昼時でも夕飯時でもない。
元々約束をしていたわけでもない。
いや約束はしてなくても来るんだけど、今日はいつもの感じではなさそうで。
首を傾げれば
「総一郎くんにバレた」
とバツの悪い顔をした。
「クソサドは血眼になって探してるアル」
神楽ちゃんの言葉を思い出す。
…ん?すぐにバレないように手は打ってあるんじゃなかったっけ?
その会話したの数日前じゃない?
何でこんな早くにバレたのか。
『旦那、手打ってあったんじゃないんですか』
「いやーそれが…」
神楽ちゃんの泊まったあの日、旦那と新八くんが万事屋へ帰る途中に総悟くんに捕まったらしい。
ここに来るまでつけられてたとかで。
「言われたよここにお前ェがいんのかって」
『それで答えたんですね』
「まーな。だけど会うつもりはねェと」
『…私の意思を尊重すると』
「そーいうこったァ。ったく、あのガキはあんな心配してるってのにもう片方は何もねェってか」
『そういう人ですから…』
十四郎ちゃんの顔が浮かんで胸が苦しくなった。
まぁ心配されるとは思ってもなかったし、そう言われてもやっぱり…としか思わなかった。
けれど、相手に対する気持ちを自覚したからか、いやきっとそれの所為なのだが。
確実に痛いものへと変わってしまったらしい。
「いつもよりブスになってんぞ」
『今日の晩ご飯用意しないんで』
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年10月26日 11時