百九十九 ページ49
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一通りの仕事を終えて縁側へと顔を出せば先約。
襖の音で気づいたのか何も言わずに隣を叩くからそこに座った。
「夜遅くまで仕事すんなっつったろ」
『総悟くんが始末書放棄してサボったせい』
変わったのに結局予定通り見廻りという名のサボりに出た総悟くんのせいで私が彼の始末書を代わりに書く羽目になった。
偶然顔を出していたとっつぁんにそれを伝えれば局長室でバズーカをぶっ放されてボロボロ。そんなこともあり仕事は大幅に遅れ、結局日付を超えた。
はぁ、と態とらしく溜息を吐けば腰に回された腕に距離を0にされた。
少し高い彼を見上げるようにそちらを見れば降ってきたキスに頬が染まった。
隠すように下を向けば鼻で笑った十四郎ちゃん。
『そういうの、急にするのはずるいです』
「俺の女なんだから何しようが勝手だろ」
『そんなこと言う奴だったっけ?』
甘々になりすぎな十四郎ちゃんが少し怖くなるも愛されてるのかな、と思えば嬉しくなって頬が緩んだ。
それを見られていたのか頬をギュッとつままれるから睨んでやれば口角を上げる。
『ねぇ十四郎ちゃん』
「なんだよ」
『私達の今日までの日々って世界の中で見たらちっぽけなんだろうね』
「だろーな」
あんなに泣いた日々も命をかけた日々も何もかも。
全部私達の周りで起きたことは世界を上から見てる神様からしたらはちっぽけなもので。
けど、私達の中では大きなものだった。
きっと彼と出会えたのも、この真選組に居られるのも全てはあの出来事があったからで。
なんて、考えたらきりがないけれど。
『私十四郎ちゃんに出会えてよかったよ』
「奇遇だなァ。俺もだ」
目を合わせて笑い合うだけで私はこの世界が素晴らしいと思える。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年10月26日 11時