この世界の片隅に4【土方十四郎】 (ページ39)

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師走の振り上げた刀は十四郎ちゃんが刃を手で掴んだことにより頭の上でピタリと止まっていた。

掌から流れ出ている赤が甲を伝い、腕へと流れていく。

『ちょ…アンタ何してんの！』

「それはこっちのセリフだ‼」

師走へ蹴りを入れればガタンと音を立てて倒れた。刀は十四郎ちゃんの掌に残ったまま。

「何が疲れただ、死ぬことを覚悟した目しやがって。ンなもん許すわけねェだろ‼」

『だから私が死なないと今後だって「だってもクソもねェ！！」

刃から手を離し、師走や蘭たちから遠ざけるように真選組の方へそれを投げる。
カランと音がしてそれに気を取られてた数秒。私の首元は軽くなった。

振り向けばいつの間にかザキちゃんと原田が蘭を後ろから拘束していた。

「てめェが死んだらコイツらはどうなんだ！真選組なんて肩書き捨ててぶっ殺すに決まってんだろーが‼」

『そ、そんなことあるわけ「ねェわけねーだろ‼!」

真っ赤な手が私の頬へ触れる。

少し冷たい掌と今にも泣き出しそうな瞳に捕らえられたら目を逸らすしかなかった。

「お前無しで侍になったって、意味ねェの分かれよ…」

『と、しろうちゃ…』

「此処で死んでも、また負の連鎖が生まれんだけだぞ。もし他が我慢しても総悟は聞かねェだろーな」

『…ただでさえ言うこと聞かないもんね』

「そういうこった。それに誰もお前が死ぬことを望んじゃいねェ」

『…え？』

俯きがちになっていた視線は頬に添えられた手によって上へと向かされた。先程の潤みかけた瞳はそこにはなく、あるのは私の大好きな真っ直ぐと前を見据えてる十四郎ちゃんの瞳で。

「俺らが、お前ェをどれだけ大切にしてっか。そろそろ気付け、クソガキ」

＂死の淵から戻ってきやがれ＂

そう言って撫でられた感触に一筋の雫が頬を伝った。