殺人鬼に花束を【赤】

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驚きと絶望で 何も言えない私とは裏腹に、彼はゆっくりと立ち上がって鞄を持った。


渋谷「…安心せぇよ。別に殺したりせぇへんから。」

『…、』

渋谷「世話んなったな。」



じゃあ、と言って すばるくんは私を見ずに歩き出す。



慌てて彼を追おうとした足を止める。
引き止めて、どうするつもりなのか。


もしかしたら自分を殺すかもしれない人

今までだって、私が気づかなかっただけで 殺す機会を伺ってたかもしれないのに


立ち止まったままの私を振り返ると、彼は何かを言いたげに口を開いたけれど

やっぱり閉ざして、そのまま、



_ﾊﾞﾀﾝ



姿を消した。




『…なんで、よ』



一人きりになった部屋。
ちょっと前に戻っただけ。


なのに





"ありがと"


"きのこ、嫌や"


"アホやな、A"




どうして

こんなにも胸が苦しくなるのか




"おれ、お前の飯すきやで"


"寒いねん もっとこっち来い"



どうして

涙が溢れるのか






『ッすば、…ぅ』









_どうして？


そんなの、わかってたことじゃないか




わたしは









" __A "









『すばるくん…！』









彼が、好きだ。





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