ティンカーベルは裏切らない 1 ページ25
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「お前が……やったん?」
――その声は、自分でもびっくりするくらい震えていた。
***
Aが見つからない。
鬼は俺やった。
いつも通り、ヨコとヒナ、ヤス。それから、最後にA。
俺が鬼になった時、いつもわざと最後にAを見つけるようにしていた。
それは最初に見つけたら残りを見つけるまで2人きりになるのが気恥かしいのもあり、なにより、
最後まで残れたことを嬉しそうに、得意げに話すAを見るのが好きやったから。
せやからこの日もそうした。
後悔することになるなんて、思わなかった。
「あかん……こっちにはいないわ…」
「家にも駄菓子屋の通りもおらんかった。ほんま、どこ行ったあいつ」
肩で息をしたヨコとヒナが焦りを滲ませた声で呟く。
「もうオカンらに言ったがええか?」なんてヒナが言う間にも、俺はスマホを握りしめたまま。
――おかけになった電話番号は……___
「なんで……、」
何度も、何度も何度もかけてるのに、一向に繋がる気配がない。
こんなこと初めてで、無意識に舌打ちをした。
俺が、間違えた。
最初にあいつを見つけてやるべきやった。
気恥かしいとかそんなん言ってる場合ちゃうかった。
そもそも、隠れんぼなんて誘わなければよかったんや。
あいつになんかあったらどうしよう。
もう、会えなかったら――
「――すば.るくん」
トン、
「……は、」
「息してや?大丈夫やから」
「…やす、」
ふわり。
真っ暗やった視界がヤスの笑顔でいっぱいになる。
言われて初めて、自分が息を止めてたことに気づいた。
「Aは大丈夫。俺わかんねん……"兄妹"やから」
「…ん」
「もっかい探し行こ」
「せやな!もしかしたら意外なとこおるかもしらんからな!」
言うが早いが、ヤスの言葉にヒナが頷いて俺らの返事も聞かんと走ってった。
その後をヨコが追いかけて、ヤスと2人だけになる。
「ほな、俺こっち行ってみるな」
「ん…見つけたら、」
「わかってるてぇ、ちゃんと電話するから!」
――あとでな、すば.るくん。
いつも通りだった。
俺ら3人が泡食ってんのに、ヤスだけはいつも通り、いつも家の前で別れる時のように軽やかに笑って森の奥に消えていった。
だから止めなかった。背を向けて、違う道を駆け出した。
俺は、また、間違えた。
追いかけるべきやったって後悔した時には、もう何もかも遅くて………、
――1年後にその森で死体が見つかって、この日の胸騒ぎの意味を知ることになった。
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なっか(プロフ) - ぁぃ岡ちゃんさん» 素敵なコメントありがとうございます(;▽;)サスペンス要素有りと見せかけて内容の薄〜い作品になってしまいましたがそう言ってもらえて嬉しいです…!嘘つきな貴方まで読んで頂いて土下座したい勢いです…(語彙力)また別の作品でもお会いできるように頑張ります! (2018年10月31日 18時) (レス) id: c94037b149 (このIDを非表示/違反報告)
ぁぃ岡ちゃん(プロフ) - 先ほど、嘘つきな貴方へを読み、本気で号泣して、鼻かみすぎて鼻血まで出しながら(爆笑)一気読みさせて頂きました。お気に入り作者に登録させて頂いたら同じ作者さんで感動してコメントしてます。2個にわたる長文ですみません。更新頑張ってください応援してます (2018年10月27日 20時) (レス) id: e74d3c3c77 (このIDを非表示/違反報告)
ぁぃ岡ちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!今日この作品を初めて読ませていただきました、この前は夜中にピーターパンの話なんて怖くて読めない!って思ったのですが、今日は朝方から電気つけて布団かぶって本気でドキドキしながら読みました。最後の展開に心持っていかれまくりでした!! (2018年10月27日 20時) (レス) id: e74d3c3c77 (このIDを非表示/違反報告)
なっか(プロフ) - タルヒさん» 元々村上くんが2人を本物の兄妹だとバラす(?)シーンが書きたいが為に出来た過去一重くて短い小説ですが、そう言ってもらえて嬉しい限りです(><)雰囲気小説でしたが、最後まで読んで頂きありがとうございます! (2018年10月26日 4時) (レス) id: c94037b149 (このIDを非表示/違反報告)
なっか(プロフ) - 小恭さん» コメントありがとうございます!!安田くんは初挑戦だったんですけど、安田担の方にそう言ってもらえて嬉しいです…!次回作でもお会いできるよう頑張ります\(^o^)/ (2018年10月26日 3時) (レス) id: c94037b149 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なっか | 作成日時:2018年9月11日 3時