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「こっちですよ」
薮課長が片手を上げた。
ゆったりした6人掛けの席に薮課長がすでに着いていて、食前酒を気取って何やらすでに一杯やってる。
接待ならあり得ないが、まあ、今日はプライベートということで、大目に見よう。
それに、薮のやつ、ほんとに爆イケで、文句を言う気力もなくなる。
クラッシックの流れる店内で、薮にはそこだけスポットライトが当たっているように目立っていた。
私となっちゃんは薮課長の対面に座った。
「お招きいただいて、ありがとうございます」
一応、礼儀を守って微笑みながらお礼を言ってやると、
「いえいえ、こちらこそ。総務課長には、大変にお世話になっていますし。
いつも〈見守って〉いただいて、ありがとうございます」
とニヤリと笑った。
ああ、確かに私は見守らせてもらっているよ、アンタと八乙女の〈ご活躍〉を。
薮課長の牽制くらいでたじろぐ私ではない。
「ま、お世話なんてとんでもないですわ。
薮課長と八乙女主任の〈ご活躍〉は際立っていますものね。
――総務としても全力で支援させていただきますよ」
薮と私は一瞬鋭く視線を交差させたが、すぐにお互い仮面をかぶって穏やかに体面を取り繕った。
「えーと、八乙女主任は?」
なっちゃんが私と薮のひそかな争いに気づいて、話題を変える。
こういうとこ、気が利いてんのよね、なっちゃんは。
「八乙女ももうすぐ来るんじゃねぇの?――ホラ、来た来た」
薮は顎先で入口を示した。
そこには、ほわんと中途半端に唇をひらいた色っぽい八乙女と、モデル並みに長身でイケメンのスーツ姿の青年がいた。
見知らぬイケメンはまるで八乙女をエスコートするように寄り添っていて、優しく微笑んでいる。
「――八乙女。こっちだ」
薮課長はニヤニヤ笑いながら、アペリティフのグラスを掲げた。
それに気づいた八乙女の大きな瞳がより大きく見開かれ、薄桃色の唇がぽかんと開いた。
「やぶっ……課長……。なんで……」
「なんでって、これから中島様も含めて食事会だろ?
――ようこそ、中島様」
薮は、ふふふ、と薄い唇に悪そうな笑い声を乗せた。
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冬の勿忘草(プロフ) - 読み返したくなるお話し。何度でも食べられる^^*うまうま 始まった頃が懐かしいです…☆ (2019年5月25日 22時) (レス) id: d769e67f4c (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あいさん» あい様、気づけば月末です。いやー、みんな頑張った…やりきりました…。作品を大好きと言っていただけてホントに嬉しいです★温かくこれからも見守ってくださいませ。ありがとうございます。 (2018年5月30日 21時) (レス) id: 0d848a077f (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - しろくまさんの作品が好きすぎて 、やぶひかも好きすぎて、ベストコンビ大賞も1位を取りたくて、同じようなコメントばかりしてごめんなさい!しろくまさんの作品はどれも大好きです!これからもよろしくお願いします。 (2018年5月29日 23時) (レス) id: 47fe4b83c6 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あいさん» わーんごめんなさい。下はあい様へのレスです〜。 (2018年5月29日 20時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あい様、こちらにもありがとうございます。残り日数が少なくなって、焦り気味でございます。オマケのお話しはやぶひか担みんな大好きナポリタン★一度は書きたかったネタです(笑)reject 本編もまた必ず書きます!よろしくお願いいたします。 (2018年5月29日 20時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろくま | 作成日時:2018年2月22日 16時