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「中島建設さんから電話があって、これからすぐ打ち合わせがしたいって言うんだよ。どうしよう」
中島建設は確か、八乙女主任が本社に戻って間もなく契約を取ってきた大口の顧客だ。
大事な顧客の突然の要望に、薮課長は顔をしかめる。
近々、大型のプロジェクトが立ち上がることは総務部にも聞こえてきている。
「……薮課長?」
伊野尾がほんの少しだけ首をかしげて、八乙女と薮をみる。
八乙女は伊野尾が退社してから本社に戻ったんだから、伊野尾はタイミング的に八乙女のことを知らないはずだ。
もちろん薮のリスク回避により、伊野尾は八乙女を薮の今カノだとは知る由もないだろう。
でも、私となっちゃんは――今まさに元カノと今カノが、彼氏を挟んでご対面していると知っている。
目を離せないよ、コレ。
なっちゃんはコーヒーカップを持ったまま立ち尽くしているし、私は目を見開いて事の成り行きを鼻息荒く見守っている。
「しゃあねぇな」
薮課長は軽く舌打ちしてから、つかつかと私の方へやって来た。
えっ、ちょっと待て。
予想をしていなかった薮の行動に、内心は慌てふためいていた。
しかし、そんなそぶりは微塵も見せない。お局様の意地だ。
「すみません、総務課長。私の代わりに昼食会に出席していただけますか?
急な打ち合わせが入ってしまって」
薮課長は誠実そうに頭を下げて、それからなっちゃんの方に視線を送る。
「悪いけど、至急中島建設と打ち合わせに行くから。
例の書類、そろってるか確認してくれるかな」
「はいっ」
爆イケ上司に命じられ、なっちゃんは弾かれたように飛び出して行った。
しかしな、薮課長。アンタは私の上司じゃない。
今日はアシスタント業務の応援に来ているだけだから。
アンタに命じられるつもりは、これっぽっちもないから。
「あら、薮課長。
八乙女主任が中島建設さんの担当者だと伺っていますよ?
私が伊野尾商事さんの昼食会になんて、ずうずうしくてとても顔をだせませんわ」
にっこりと拒否ってやる。
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冬の勿忘草(プロフ) - 読み返したくなるお話し。何度でも食べられる^^*うまうま 始まった頃が懐かしいです…☆ (2019年5月25日 22時) (レス) id: d769e67f4c (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あいさん» あい様、気づけば月末です。いやー、みんな頑張った…やりきりました…。作品を大好きと言っていただけてホントに嬉しいです★温かくこれからも見守ってくださいませ。ありがとうございます。 (2018年5月30日 21時) (レス) id: 0d848a077f (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - しろくまさんの作品が好きすぎて 、やぶひかも好きすぎて、ベストコンビ大賞も1位を取りたくて、同じようなコメントばかりしてごめんなさい!しろくまさんの作品はどれも大好きです!これからもよろしくお願いします。 (2018年5月29日 23時) (レス) id: 47fe4b83c6 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あいさん» わーんごめんなさい。下はあい様へのレスです〜。 (2018年5月29日 20時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あい様、こちらにもありがとうございます。残り日数が少なくなって、焦り気味でございます。オマケのお話しはやぶひか担みんな大好きナポリタン★一度は書きたかったネタです(笑)reject 本編もまた必ず書きます!よろしくお願いいたします。 (2018年5月29日 20時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろくま | 作成日時:2018年2月22日 16時