【文豪ストレイドッグス】元.ポートマフィアの指導者 part 9 (ページ23)

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弐佰肆拾玖頁─両組織ノ困惑 14─ ページ23

『いえいえ、こんなのお礼を云われるほどではないですから』

「そんなことないですよ！とても助かります。Aさんって昔から機械に詳しいんですね」

『どんなイメージを持たれているのか知りませんが私は元々非戦闘員ですよ？それをあの人がもっと前線に行けーて云うものだから仕方なく』

「あの人って？」

『世話になったお医者さんです。今どう思ってるか判らないけど、私あの人のこと苦手なんですよね。愚痴聞きます？』

「い、いえ遠慮しておきます」

何か善からぬものを察知したのか、彼はそろーっと目線を下にずらした。

『英断ですね。聞いてたらマフィアに命狙われてましたよ』

彼は顔を青ざめる。

善い人。この少ない会話だけでもそう強く感じた。

あまりにも反応が素直で面白いためもう少し揶揄いたくなるが、一応初対面なのでぐっとその気持ちを堪える。

気を紛らわせるように私は机に入っていた花の種を取り出す。

そして異能力を発動させた。

『細やかなお礼です。受け取ってください』

「え、いいんですか？」

白髪の彼に手渡すのは小さな可愛らしい黄色い花。

道端でよく見かける西洋蒲公英とは違い、こちらは在来種の日本蒲公英だ。

『お話楽しかったです。まだまだ沢山続けたいのですが、折角休みをいただいたので少し休憩しますね。何かあればフルールに』

小さく欠伸をし、腕を枕代わりにして机に伏せる。

紙の擦れる音、送風機の音、機械の音。

耳に届く雑音が妙に心地良い。

私はそのまま溶けるように眠りへと落ちていった。

*

「......Aさん、寝ちゃいましたね」

静かに寝息を立てるAを見て敦が云った。

その姿はどこにでもいるような少女のものであり、とても黒社会で生きる人間には見えなかった。

「最近忙しかったんだろうね。彼女、警戒心が野生動物並みだから普段ならこんな処では寝ないのだよ。敦君気に入られたね」

太宰はAの傍らに座るぬいぐるみに目を向ける。

無防備に眠る彼女の代わりに彼はいつも以上に耳に意識を集中させていた。

「この調子だと帰りまで起きないかもね。まぁこういう時じゃないとゆっくり休めないだろうし、こちらも変に邪魔されないし好都合だ」

隣で騒がしく手を動かす同僚を横目に太宰は愛読書に目を落とす。

空が黄昏色に染まる頃、彼はそっとその小さな肩に手を触れた。

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[蒲公英]
幸せ、神託、真心